新しい記事を書く事で広告が消せます。
由紀の中に、高揚の気持ちが巡るのが伝わってくる。
「はーーーーい」
そう言って玄関に走っていく。
ドアを開けた先に居たのは、想像した通りの男――彰人だった。
「ごめん、由紀ちゃん、遅くなっちゃったね」
そう言って笑う男に対し、隆は、苛立ちを覚えた。
恋敵が目の前にいるのだ、喜べるわけがない。
「寂しかったんですよー。さ、早く入ってください」
しかし、由紀から伝わってくる感情は、愛しさに溢れるものだった。
その感情を一緒に感じた隆は、一瞬で理解する。
あぁ、由紀は、この男が好きなんだ――と。
感情として流れ込んでくる否定しようがない事実は、由紀への恋心を諦めるには十分すぎる物であった。
告白もしていないのに、確実に振られる事を理解し、隆は胸を締め付けられた。
そして、自分は取り返しのつかない事をしようとしていたんだ、という罪悪感が押し寄せる。
「(彼女が悲しむような真似をせずに済んで、本当に良かった……)」
そう頭の中で言葉にした隆は、心から安堵した。
……今こうやって憑依して、彼女の排泄シーンまで眺めました、
なんてことを知られたら、充分悲しむと思うが。
しかし、隆はその事は深く考えないようにした。
そう――別にばれなければ悲しまれないし、と。
高校生男子の立ち直りは早い。
由紀に確実に脈がないなら、他の子を探せば良いや。
そういえば、三年の美由紀先輩って美人だよなぁ。
そんな不埒な事を考えながら、とにかく今の状況を楽しむことに決めた。
この二人はおそらくこれからSEXするんだろう。
それなら、せっかくだから、それを体験させてもらおう。
女の感覚ってのは、男よりずっと凄いって言うしな。と。
しかし、経験がない隆には、SEXに対する想像力が欠如していた。
女としてSEXを体験すると言う事が何を意味するのか、その時は全く理解していなかったのだ。
そう、つまり――男に抱かれる、という事を。
由紀の部屋に入った直後、二人は互いの背中に腕を回し合った。
隆――つまり由紀の視界に彰人の唇が迫ってくる。
このとき、隆はやっと気付いた。
「(うげぇ! もしかして……そういう事なのか!?)」
気付いた時にはもう遅い。
由紀にとっては最愛の――隆にとっては最悪の感触が唇に伝わってくる。
「ん……ふ……っ」
由紀の気分の高揚は自分にも伝わってくるが、
それ以上に、生暖かい生肉を舐めさせられているような感触に吐き気を覚える。
最も、その吐き気は由紀に伝わる事は無いわけだが。
「(くそぅ。我慢だ我慢……きっとこの後は気持ち良くなるんだ。だから我慢我慢……)」
嫌がったところで、隆には拒否権は無い。
今は必死に明るい未来を想像し、この地獄をごまかすしかないのだ。
やがて、唇が離れる。
やっと地獄が終わった……そう思った隆に、さらなる地獄が待っていた。
由紀の視線がすーっと下がった。
いや、ちょっと違う。由紀が足を曲げひざまずいたのだ。
やがて、彰人の腰のあたりに顔が近付くと、
由紀は、ゆっくりと、彰人のズボンのベルトを外しにかかった。
そして、ズボンとトランクスを一緒に下ろす。
目の前には、彰人のモノが映っており、生臭いにおいが鼻に届く。
「(ま……まさか!)」
想像通りの悲劇が隆を襲う。
由紀は、ますます高揚し、愛おしそうに目の前のモノを眺める。
そして、口を開き、ゆっくりと、そのモノを口に含んだ。
口の中に、柔らかい肉の感触が広がる。
感触だけなら先ほどの唇と変わりないが、生臭いようなにおいと微妙な塩味――
そして何より、男のモノを咥えているという事実が、隆の嫌悪感をより激しく攻め立てる。
隆には、なぜ、由紀がこんなものを愛おしそうに舐めることが出来るのか理解が出来なかった。
やがて、口の中の感触が変化していく。
由紀が舐めとっているためだろう、徐々に、生臭さと塩味は感じられなくなっていった。
しかし、それに反比例するように、口の中に微妙な変化が伝わった。
さっきまでは、たやすく口に含めていたのに、
まるで生き物のようにムクムクとうごめき、サイズを変え、頬張るのを難儀にさせていったのだ。
そしてそれは、あっという間に含みきれない程の大きさになり、固さを増し、
まるで心臓のように力強く脈打ち、確かな輪郭を唇へと伝えるまでになっていた。
隆にとっては、その感覚一つ一つが、嫌悪の対象であり、
自分の行為――正確には由紀のだが、
ともかくそれが男を喜ばせているという事実に、悲しみを覚えずにはいられなかった。
口の中をそれが出し入れされる度、彰人は小さく呻く。
口に男のものが入っているという状況に徐々に慣れてきた隆は、嫌な予感に頭を膨らませていた。
「(このまま続けたら……もしかして、口に出される……?)」
しかし、その心配は杞憂であった。
彰人の手が、由紀の頭を掴み、ゆっくりと口の中のものを引き抜かせる。
「(た、助かった……これで今度こそ地獄が終わった……)」
そんな隆の安堵をよそに、二人は服を脱いでいって裸になる。
「(や、やった。ついにセックスが体験できる……!)」
そう思った隆――由紀の耳に不穏な会話が届く。
「なぁ……由紀、今日は約束通りやらせてくれるんだろ?」
「ん……う、うん……怖いけど……彰人さんの頼みだから……」
「(ん? どういうことだ?)」
その言葉から連想できる意味は簡単だ。
「(まさか…初体験?)」
このやり取りを聞けば、誰もがそう思うだろう。
困った。
隆は素直にそう思った。
学校で聞いた噂では、既に経験を済ませているという話だったのに。
今からするのが初体験だという事は、快楽などとても感じられないだろう。
あれだけの地獄に耐えて、処女喪失の痛みまで味わわなくてはいけないのか。
そう考えるだけで、浅はかな思いで憑依に臨んだ自分を呪わずにはいられなかった。
だが、隆のその想像は、裏切られることとなる。
……悪い意味で。
「ありがとう、由紀、嬉しいよ。じゃあ、四つん這いになって」
そう言うと、彰人は、自分のバッグから何かを取り出そうと手を突っ込む。
由紀は、これからされることが怖いのだろう、四つん這いになって目を閉じてしまった。
由紀が眼を閉じてしまえば、隆にも何も見ることが出来なくなってしまう。
隆自身もそうであったが、それ以上の由紀の不安な感情が伝わり、
隆の不安な感情を更に駆り立てる形となった。
そうこうしている間に、後ろに彰人の気配を感じる。
一体何をしようとしているのか。
恐らくそれを知っている由紀の鼓動が、確実に早くなっていくのを感じた。
「さ、準備できたよ。力抜いて」
そう言って、彰人の手が腰にかかる。
直後、由紀の体に――同時に隆の心に衝撃が走る。
体の中に異物が入ってくる感覚。
この感覚は――女だけの快感とは違う――まさか後ろの穴……!?
異物の侵入に対し由紀の呻き声と、隆の悲鳴が漏れる。
「う……くぅ……!」
「(うげぇ!?)」
ローションでも塗っていたのだろう。
その太さからは予想もつかないようなスムーズさで、
本来、入るべきところではない部分へ挿入されていった。
愛する恋人の願いだから、許しているだけなのだろう。
由紀の体から伝わる感覚には、快楽的な要素は一切なく、
異物に対する不快感しか、隆には伝わってこなかった。
「(うあああぁぁぁ……! 気持ち悪いぃ……! 男に尻の穴を犯されて……)」
そこに伝わる感覚に、男女の違いは無い。
つまり、隆にとってみれば、男である自分が、男に犯されているような感覚でしかなかった。
徐々に、由紀の体が馴染んできたのだろうか。
最初はゆっくりだった彰人の腰の動きが、早さを増す。
その度に、快楽とは程遠い、強制的な挿入感と排泄感が交互に体に伝わっていった。
やがて、彰人の腰が、ひときわ力強く差し込まれると、
体の中に、何か液体が注がれるような感覚が伝わり、
ようやく、隆にとっての地獄の時間が終了した。
そして、その直後、丁度時間が来たのだろう。
由紀に憑依した時と同じように、一瞬意識が途切れ、
気がついたら、隆は自分の部屋の自分の体で目を覚ました。
隆は、その日の事を思い返していた。
必死に良い思い出を探そうと。
しかし――。
最後の、あまりの衝撃的な体験に全てを飲み込まれ全く思い出せなかった。
そして――。
「うぅ、まだ尻が気持ち悪い気がする……」
そう呟いて、隆は、一人、枕を涙で濡らしたのだった。
« ここらで一つ作品解説のようなもの。 | ホーム | 憑依の喜劇(前編) »
これは悲惨(笑)
直前の直前まで、彼がどんな目に遭うのか予想できませんでしたっ。
二人の会話を聞いたときは、わたしも「処女? 処女はキッツいなあ……」と思いましたもん。
体の主導権を握れない憑依でもそれなりに楽しめそうなものですが、彼は本当にまったく良い思いを出来ませんでしたねえ(^^;
こういう、敢えて期待を外し続けるお話というのも面白いもんです。
nekome | URL | 2009-03-24(Tue)19:13 [編集]
>nekomeさん
コメントありがとうございます。
ブログにアップするのは前後してしまいましたが、男子校の悲劇を書いた後の作品でして、反動で少しコミカルなものを書きたいと思って書いたものですw
どうしても、ネタとして書こうとしていたという意識があったため、それぞれのシーンが急ぎ足になってしまったのが反省点ではありますが、直前までオチが読まれずにいたのであれば、作者としては非常に満足でございますw
ただ、主導権を握れない(気付いてももらえない)状態での行為については、また、まともなパターンで書いてみたいと思っているものでもございます。
まろんど | URL | 2009-03-24(Tue)19:30 [編集]
トラックバック URL
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
| ホーム |