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喫茶ま・ろんど

TSFというやや特殊なジャンルのお話を書くのを主目的としたブログです。18禁ですのでご注意を。物語は全てフィクションですが、ノンフィクションだったら良いなぁと常に考えております。転載その他の二次利用を希望する方は、メールにてご相談ください。

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憑依の喜劇(前編)

「憑依…術?」
古本屋の片隅でそう呟いた彼――隆は、何故そんな胡散臭い本を手に取ってしまったのかと、のちに後悔することになる。
しかし、その時の彼は、『憑依』という言葉から連想される不埒な想像に心を奪われてしまっていた。




本を裏返し、貼ってある値札を確認する。
「500円……微妙に高いな……。こんな本に金出すのも馬鹿らしいよなぁ」
そう考えた隆は、その場でパラパラと中身を確認する。
「憑依したい相手の写真と、体から離れて三時間以内の髪の毛を用意し……。なんだ、意外と簡単だなぁ」
もし、ちゃんと本を買っていれば、途中書いてあった注意書きに目を通す事もあったかもしれない。
そうすれば、結果はまた少し違ったものになったのだろうか……。


ある日の放課後、隆は行動に出る。
「おい由紀、白髪あんぞ」
そう言って隆は、彼女の髪の毛を一本抜く。
「痛っ! ちょっと、いきなり抜かないでよ!」

それは、隆が密かに恋心を抱いている女性だった。
しかし、由紀には恋人がいる。
彼女の家庭教師だ。
女同士の話に聞き耳を立て、既に、由紀が経験も済ませているという事を知った時、
隆は、悲しみに打ちひしがれた。
だから隆は今回の計画を考えたのだ。
もしこの憑依術が本物で、由紀の体に乗り移る事が出来たら、
あの男を思い切り酷い振り方をして、二人を別れさせてやる、と。
そう考えた隆は、彰人が確実に由紀の家に来るこの日、憑依術を実行してやろうと考えたのだ。

本音を言えば、彰人の方に憑依して、由紀を振り、傷心の由紀を慰める。
そんな流れが理想的だったのだが、由紀の家庭教師の髪の毛など簡単に手に入るはずもない。
それに……由紀の体に憑依できると考えれば、それはそれで、隆にとってはかなり魅力的な話だった。

胸を高鳴らせ、急いで家に帰る。
別に、家までは三時間もかからないし、その家庭教師が来るまでもまだ結構時間はある。
それでも隆は、由紀の体への興味から、一秒でも早く、憑依術を試してみたかったのだ。


「……よし、これで意識を集中すれば……!」
目を閉じ、意識を集中させる。
どうかうまく憑依できますように。そう願いながら……。

一瞬意識が途切れる。
直後、視界に広がる全く知らない風景。
「(これは……部屋?女の子の部屋っぽいな。ってことは……成功した!?)」
実行する直前でも半信半疑だった隆の期待が一気に膨らむ。
鏡を見て、本当に自分が由紀に憑依したのか確認しようとする……が。
「(なんだ……体が動かない……というより、勝手に動く……?)」
そうなのだ、今自分が存在する体は、何故か自分の意思を無視し、勝手に動いている。
そして、その体は、自分の意思と関係なく、言葉を紡いだ。
「はぁ……彰人さん、早く来ないかなぁ……」
この声は、間違いなく由紀だ……!
だが、一体これはどういうことなのだろうか。
確かに意識はここにある。体が何かするたびに、感触は伝わってくる。
しかし、体の主導権は自分にはない。
その事実が、隆に焦りと戸惑いを感じさせていた。

そうなのだ。
隆は、あの本に書いてあった大事な部分を読んでいなかった。
精神を相手に憑依させ、相手の感覚を共有できる術、という部分を。


隆は相当焦っていた。
このままでは、当初の目的――彰人を振るという行動を果たすのは不可能だ。
そして何より、問題だったのが――。
「(……これ、どうやれば戻れるんだ?)」
そう、隆は、憑依する事にばかり頭が行っていて、今の今まで、戻る時の事を考えていなかったのだ。
実際には、個人差はあれど、2~4時間程度で自然に戻るのだが、
本をまともに読んでいない隆には知る由もない。
もしかしたら一生このままなのでは、と思うと、言い知れぬ不安がこみ上げてきた。


不意に下半身に意識が行く。
「(ん……。この感じは……小便してぇ……)」
それは、男女を問わず感じることが出来る、共通の感覚――尿意だった。
隆自身の意思ではトイレに行くことはできないが、
隆が尿意を感じていると言う事はすなわち、由紀も同じように感じているという事だ。

すっと由紀が立ち上がり、ドアを開ける。
向かう先はもちろんトイレだ。
「(え……嘘! ちょ……それはまずいって!)」
隆は、ある意味で健全な高校生男子だ。
だから、女性のそういう部分に興味がない訳ではないが、好きな女性となれば話は別だ。
相手のあずかり知らぬ形でそういう部分を覗き見るという行為に、
強い罪悪感を覚えるし、何より、恥ずかしさで心が一杯になった。
しかし、行動の選択権は隆にはない。
どれだけ抵抗しようとしても、由紀は、自分の意思でトイレへと向かって行った。


「んしょ……っと」
スカートを軽くまくり、下着に手をかける。
視線には入って来ないが、下着が脱げていく感触が太ももに感じられる。
「(うわー。うわー。うわー。由紀がパンツ下ろして……うわー)」
自分の目の前で好きな女性が下着をおろしているという事実は、隆をたやすく取り乱させた。
しかも、落ち着かせる間もなく、さらなる衝撃が襲う。
「ん……!」
じょぼぼぼ……
「(うわー! ちょっ! この音……!)」
排泄の感触も、トイレに響く音も、男のそれとほとんど違いはなかった。
ただ、それが、好きな女性のものであると言うだけで、隆は理性を失うほどに取り乱すのだった。
ふと、視線が下がる。
由紀の意思によって、それが、否応なく、隆の意識に飛び込んでくる。
そこに見えたのは、夜な夜な想像していたものよりも薄めの陰毛と、尿の軌跡だった。
「(うわ……ぁ!!!)」
男であれば、竿の先から出てくる尿が、全く見えない部分……つまり、
股間の陰から流れて来ているという状況に、違和感と激しい興奮を覚えた。
やがて、音が小さくなっていき、体に感じられた排泄感も収まっていく。
どうやら、小便をし終わったらしい。
これでやっとこの空間から解放されると隆は思ったのだが、まだ終わらなかった。
男である隆にとっては、小便はそれで終わりなのだが、女性は、拭かなくてはいけない。
由紀の手がトイレットペーパーに伸びたとき、隆はその事実に気付いた。
そう、つまり……股間に手を当てるという事だ。
「(え……! ちょ……! それって由紀のマ……)」
隆がますます取り乱している事など気付きもせず、
由紀は普段通りにトイレットペーパーをその部分に押し当てる。
ほんの一瞬、撫ぜただけであったが、隆に止めを刺すには充分だった。
「(うわー!! 触っちまった!! 触っちまった!!!)」
もはや隆は冷静に物事を考える力など無く、ただただ、無様に取り乱すだけであった。

やがて、下着を上げ、トイレを出るころ、少しずつ落ち着きだした隆は、
「(くそぉ……絶対今の光景と感触を覚えておいて、元に戻れたらオカズにしてやる!)」
と、あまりに緊張感のない事を誓うのであった。

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