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喫茶ま・ろんど

TSFというやや特殊なジャンルのお話を書くのを主目的としたブログです。18禁ですのでご注意を。物語は全てフィクションですが、ノンフィクションだったら良いなぁと常に考えております。転載その他の二次利用を希望する方は、メールにてご相談ください。

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ゆでたまっ!六個目 おまけ

 門は錆び、屋根は剥がれ、ツタに支配された塀にはひびが入っている。雑草が生い茂り、窓は全てがくすみ、明かりは一切ついていない。
 詳細は知らなくとも、人が住んで居ないことは容易に想像できる。そのような場所になんの用事があるのか。加賀見小春は、塀に這うツタで隠された大穴を確認し、這いずるように敷地に忍び込んだ。
 慣れた足取りで雑草の隙間をすり抜け、正面入口へと辿り着く。屋敷の朽ち具合から比べると不自然な程の輝きを帯びているドアノブに手を掛けると、ゆっくりと押し開ける。
 ギィィィィィィィと鳴り響くドアのきしみは、既に機能を果たしていないチャイムの代替品として充分な役を果たしている。
「けほっ……」
 外からの風に巻かれた埃が宙を舞い、小春の鼻孔をくすぐる。
 まだ遅い時間とは言えないのに、外からの光は、塀にそして壁に遮られ、建物の中には殆ど届かない。
 しかし小春はそれをあらかじめ認識していたらしく、学生カバンの中から懐中電灯を取り出す。たどたどしい手つきで明かりを付けると、足元を照らしながら、埃の上に付いた先客の靴跡を頼りに、奥に向かって歩き出した。
「………十七、十八、十九」
 恐怖を紛らわせるためか、小春は声を出しながら、自分の歩数を数える。その声に応える「何か」が存在しないことが、幸運と思えるような不気味さだ。
「……三十四、三十五、三十……六」
 足音と声が同時に留まる。目の前のドアからは、小さな明かりが漏れている。中に『何か』が居る証拠に他ならない。
 小春は小さく息を呑み、ドアに貼られた白紙の文字を確認する。そして、安堵の笑みを浮かべてそのドアをノックした。
『四十九手目研究会』
 マジックで乱雑に書きなぐられたその文字が、中の『何か』の正体を如実に物語っていた。



「いやあ、待ってたよ、小春ちゃん。ささ、準備出来てるよ。今日はいよいよ実践だからね。道具は持ってきてくれた?」
 恐怖と縁遠い少女の笑顔は、いかにも場の雰囲気にそぐわない。
「はい、確かに。言われていた麻縄ですわ」
 カバンの中から取り出された麻縄は、女性の持ち物としてはとてつもない違和感を放っている。
「うん、良いね。頑丈そうだし長さも申し分ない。これなら、四十九手目の実験に申し分ない」
 左右に何度も引っ張り、強度を確認する。
「じゃあ小春ちゃん、計画通り梁に通そう」
「はい、かしこまりました」
 頭の上を横断している梁に縄の端を小春が放り投げる。その縄の端を彰が掴み取り、小春に差し出す。
 どこで覚えたのか、小春は慣れた手つきでもやいに結ぶ。それが終わると、今度は反対の端も結び、小さな輪っかを作る。
 絵面だけを見ると、首吊りの準備にしか見えない。場所が場所だけに、事情を知らない人間が来たら間違いなく誤解して二人を止めるだろう。
「うん、大丈夫だね」
 垂れ下がるロープにぶら下がりながら、改めて強度を確認する。
「よし、これで準備は万端。じゃあ、男役は小春ちゃんに頼んだよ」
「はい、任せて下さいまし」
 小春は、ロープを握る彰の背後に陣取る。
「そう、僕は常々思っていた……。駅弁ファックには大きな欠点があると」
 小春に語りかけるではなく、囁くように小さな小さな声で話す。それは、自分の考えを再確認しているように感じられる。
「確かにダイナミックなプレイではあるけれど、あれはそもそも男側に相当な筋力が求められる上、体力の消耗が激しすぎる……。しかし、この方法ならばその欠点を克服できるんだ」
 小春の腕が彰の腰に巻き付く。
「ん……!」
 小さく漏れる声と共に彰の体が持ち上がる。小春の腕は既に激しく震え、数秒と持たないだろう事が感じ取れる。
「そして、昔から言う! 首を絞めると締まりが半端なく良くなると!」
 意を決し、彰が輪っかに向かってその首を突っ込む。
「だからこうすれば! 男の負担を軽くしつつ、かつ、膣を締めてくれる筈! 一石二鳥の素晴らしいアイディアだ! まさに四十九手目に相応しい!」
 直後、小春の腕が限界に至り、彰の腰から離れる。
「ぐぅげっ!?」
 床から数センチ浮いた彰の足が宙を掻く。
「す、すみません!」
 慌てた小春が彰の体を支え直そうとするが、暴れる彰の体は上手く掴むことが出来ない。
「首っ! 首っ! 締まりっ! 過ぎてっ! 息っ!」
 もがきながら彰が声を発する。喉の奥から絞り出されているであろうその声は、声だけ聞くと男のものか女のものかも分からない程の濁りを持っている。
「彰さん! テーブルに! テーブルに足を掛けて!」
 小春の言葉で、近くにテーブルがある事を思い出し、そちらに足を伸ばす。運よく足先が届き、彰は呼吸を許されることとなった。
「ぜひゅー……ぜひゅー……。し、死ぬかと思った……」
「申し訳ありませんでした……。しかし、この危険性を考えると……」
「うん、残念だけど没だね……」
 縄から首を外しながら、そして、そんな彰を見ながら、二人は、残念そうに溜め息をついた。



「と、言う訳で、今回は失敗でした。また、次回報告するからね」
「うん、まあ、良いんじゃないか? どうでも」
 報告を聞く耕也の視線は、最後まで雑誌から離れる事は無かった。

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