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喫茶ま・ろんど

TSFというやや特殊なジャンルのお話を書くのを主目的としたブログです。18禁ですのでご注意を。物語は全てフィクションですが、ノンフィクションだったら良いなぁと常に考えております。転載その他の二次利用を希望する方は、メールにてご相談ください。

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ゆでたまっ!六個目 風邪の度に這うのか4(了)

「しかし、彰に付き合っていると俺も頭が痛くなるな……」
 部屋の主は、一リットルの質量を排泄するためにトイレに行っている。歩いたら出るという理由で床を這い進む姿が非常に滑稽で、耕也の苦笑いを誘った。
「……本当に頭痛がするな。もしかして俺も熱が出てるんじゃなかろうか。……ちょっと測って見るか」
 ベッド脇に置いてある体温計に手を伸ばす。
「口でだと間接キスになるな……って、何を照れてるんだ、俺は」
 今更間接キス程度で照れる自分に大いに疑問を抱く。
「うん、そうだ。あいつのことだから、普段は尻で測ってるだろうしな。それを考えると口に含むべきじゃないな、うん」
 何を言い聞かせているのか、照れた自分をごまかすために、無理矢理納得させる。
「というわけで、脇で、と」
 一人で納得し、体温計を脇に挟む。
 じっとしていると、遠くからあまり心地の良くない水音が響く。
「うわあ、どんどん出てくる。一リットルってすごい量だなぁ。これが全部お腹の中に入ってたって言うんだから、人体って神秘だねぇ」
 耕也は聞こえないふりをして体温計に集中する。
「おおー、凄い。液体がどんどん透明になってく。これはもうお腹の中が空っぽになった証拠だね。これなら座薬どころかゆでたまごだって肉棒だってどんと来いって感」
「やかましい! 貴様はトイレも黙って出来んのか!」
「はい! 出来ません! する気もありません!」
 病人とは思えない即答ぶりに耕也がうなだれる。同時に体温計のアラームが響く。
「はぁ……頭痛の原因は熱じゃなさそうだな……。どれどれ……って三十八度六分!? 彰と同じ!?」
 驚き声を上げる。
「って、いやいやいやいや、流石にそこまで熱が出てたら早々に気付くだろ。それとも、それに気付かないほどに疲れてるのか、俺?」
 額に手をあてて熱がないかを確認する。喉にも手を伸ばし、腫れていないか確認する。しかし、どうにも自覚症状らしきものが確認出来ない。
「……待てよ。彰と全く同じ……?」
 耕也の頭に疑念がよぎる。
「ふむ……これが良いか」
 タオルを絞るのに使った洗面器に体温計を入れる。そして、先程と同じように数分待つ。
「ううん、全て出たと思っても、ちょいと体を捻ると奥の方からちょろちょろと……。やっぱり一リットルもあると相当体の奥まで入り込んでるんだねぇ」
 待ち時間に聞こえる彰の言葉には完全に無視を決め込み、耕也は一切答えようとしない。
「三十八度六分……」
 スイッチを切り、再び入れる。今度は、どこにも挿さずに変化していく数字を眺める。
「ああ、ウオッシュレットが。ウオッシュレットの水が緩んだ肛門から再び体内を潤す。でもそれが素敵……!」
「三十八度……六分」
 ベッド脇にあるゴミ箱に目をやる。そこを漁り、体温計の説明書を発見する。
「なになに……。この体温計は、表示する数字を指定できるジョークグッズです。本来の目的以外に使用された場合、健康への影響は保証できかねます。と……」
「ふうー。出た出た。いやあ、一ヶ月分まとめて出た気分だね。願わくば次はちゃんとプレイとして耕也に頼みた……い……」
 耕也の握る説明書に気付き、彰の笑顔が瞬時に曇る。
「彰……。これは?」
 対照的に耕也は満面の笑顔だ。無論、その笑顔が伝える感情は、見た目とは対照のものだ。
「いや、その、それは、えっと、あの、いわゆる、なんていうか」
 彰の目が泳ぐ。
「説明は……いらん!」
 耕也の右腕が勢いよく振り抜かれる。
「がぎゅっ!」
 彰の首を直撃し、体は慣性に流されそのままベッドに倒れ込む。そして、追い打ちをかけるように耕也が片手で彰の顔面を掴み――。
「って、熱っ!? お前、熱は嘘じゃ――」
 慌てて彰をベッドに落とす。
「いや、何と言いますか、嘘と言いますか本当と言いますかあのその……げふっ」
 耕也の一撃がとどめになったらしく、彰は力なくベッドに倒れ込んだ。



 スーパーの青果売り場で、幾つかの果物を見比べている。
「で――。彰さんは大丈夫なのですか?」
「ん、もう峠は越えたらしい。幸い意識も戻ったから、順調ですよ」
 彰の意識が喪失したため、あの後、耕也は慌てて救急車を呼んだ。その後、改めて正しい体温計で測り直したところ、四十二度一分の高熱である事が確認されたのだ。
「ここまでの高熱だと、俺に看病してもらえずに速攻で病院に連れて行かれてしまうと思って……だそうだが……」
「彰さんらしいですわねぇ……なんというか色んな意味で」
 意識を取り戻した彰は、耕也が病室に顔を出した途端に飛びついて来るだろう。
 その時に投げつけても害がないだろうという理由で、メロンではなくイチゴをかごに放り込み、二人は複雑な表情でレジに向かうのだった。

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