喫茶ま・ろんど

　それもこれも、みんな耕也が悪いんだ。
　尻に注入してくるまではまだしも、その後ちゃんと飲むなりまでしてくれないから……。
　……やっぱり、甘すぎたからかなぁ。そうだよね、蜂蜜400ccも飲んだら、そりゃあ胃ももたれるだろうし。
　うん、次は無難にコーラとかにしておこう。……でも、炭酸って、お尻の穴に入れても大丈夫なのかなぁ。
「こんにちはー。水道屋ですがー」
　あぁ、来た来た。
「はーい。ご迷惑かけて申し訳ありません。トイレはこちらですー」
「いえいえ、お仕事ですから。詰まった原因に心当たりはありますか？」
　う……。うーん、流石に一般の人には言いづらいなぁ……。一応、耕也以外には真人間で通ってるし……。
「え、えーっと……。その……。と、友達がいたずらで変なものをトイレに流したみたいで……」
「ふーん、友達ねぇ。彼氏じゃないんですか？」
　う……。困った、苦手なセクハラタイプの人だ。
　やなんだよなぁ、こういうの。相手が迷惑がるとか分からないのかな。まぁ、適当にあしらってとっとと帰ってもらおう。
　……蜂蜜の余韻があるうちにいろいろ楽しみたいし。
「あはは、そんなんじゃないですよー。それよりどうです？　直りそうですか？」
「あぁ、これくらいならすぐですよ。今、汚れを溶かす薬を入れてるんで五分くらい待ってて下さいね」
　それなら良かった。もし万が一つまりが直らない、とか言われてたら、お風呂場で用を足す羽目に……それはそれでありかな。
　どうせなら四つん這いになってお尻を突き出しながら……。それも、耕也に命令されて嫌々やってる設定で……。
『あぁ、耕也、こんなの恥ずかしいよぅ……』
『こんなの？　そんな言い方じゃ何がなんだか分からねぇなあ』
『うぅ……。こんな……こんな犬みたいな……』
『あぁん？　雌犬が犬の格好して何で恥ずかしがるんだよ？　それになんだぁ？　恥ずかしいとか言いながら、勝手に濡れてきてるじゃあねぇか』
『あぁん、そんな……。かき回さないでぇ』
『おらおら、とっとと小便出しちまえよ。そうしたらご褒美に俺様の肉棒を突っ込んでやるから』
『うぅ、わ、分かりました……。それじゃあ……』
『おいおい、小便する前に言うべき事があるだろうが。そんな事も分からねぇのか？』
『ご、ごめんなさい。どうかこのいやらしい雌犬の排泄する姿をご覧下さいませ、ご主人様……』
　……素敵だ。今度頼んでみよう。
「……くさん。お客さんってば」
「え！？　あ、は、はい！」
　いかんいかん、つい妄想しちゃった。
「終わりましたよ。もう大丈夫です。排水管が汚れでつまりかけてた所に、何かつまりやすいものを流しちゃったみたいですね」
「そうですか、ありがとうございますー」
「えーっと……」
　ん？
「彼氏とはずいぶん過激な事してるみたいですけど、出来れば口には出さない方が……」
　あれ？　僕、声に出してた？　そう言えば、妄想してるだけのつもりなのに、しょっちゅう耕也に突っ込まれてたなぁ。
　あれは愛の力だと思ってたけど、なぁんだ。僕が声に出してただけか。残念……。
「あ、あはは。ち、違いますよぅ。あれはその、願望みたいなもので」
　しまった、なんだか墓穴を掘ってしまったような……。
『ふぅん、お客さん、そんな願望があるんですか。それならそうと言ってくれれば私が――』
『あぁ、やだ！　やめて！　違うんです！』
『何が違うと言うんですか？　ほら、下着の上からでも濡れているのが分かる』
『あぁ、ち、違うんです、それはお尻に残ってた蜂蜜が……』
『蜂蜜？　そんな事をしてトイレをつまらせたのですか？　いけない人だ、これはやはりお仕置きが必要ですね』
『ふわぁ！？　やだぁ、な、舐めないでぇ！』
『驚いた、本当に蜂蜜だ。お尻の穴がこんなに甘い女なんて聞いた事がない』
『やだやだぁ。そこは耕也だけのものなのぉ！』

「あ、あのー……。じ、じゃあ、私、帰りますんで。また何かあったら連絡してください」
　……しまった。また口にしてたっぽい。
「そ、それじゃあ、失礼します。か、彼氏さんと仲良くしてくださいね」
　うぅん。そそくさと帰る後姿がいかにも気まずさを強調しているなぁ。
　うーむ。こうなったのも全部耕也が飲んでくれなかったからだ。明日、きっちりお返ししてもらわないとね。

　取り合えず……。もう来てくれそうにない業者さんリストに追加しておかないとなぁ。はぁ……。