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喫茶ま・ろんど

TSFというやや特殊なジャンルのお話を書くのを主目的としたブログです。18禁ですのでご注意を。物語は全てフィクションですが、ノンフィクションだったら良いなぁと常に考えております。転載その他の二次利用を希望する方は、メールにてご相談ください。

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ゆでたまっ!1

「……結論が出た。彰、お前はあほだ」
 目の前の元男に向かって俺はきっぱりと言い切った。涙目になっているが、それは俺の冷たい言い方を悲しんでいるのではなく、自分の愚かさを嘆いているからだ。
 こんな言い方を出来るのも、仲の良さの証明という奴なのだが、今回の発言は、本当にコイツをあほだと認識しての発言だった。

「うぅ……。だって、せっかく女の子になったんだよ? だったら、試してみたくなるのが心情ってもんじゃない?」
 申し訳なさそうな上目づかいに加え、涙目である事が俺の心を激しく揺さぶる。
 男女間の友情が成り立たない、という言葉の意味が実感できる瞬間だった。
「そんな心情を持つのはお前だけだ。全く情けない……。大体なんでそれを俺に相談してくる!? 病院に行け! 病院!」
 深刻そうな表情でウチに飛び込んで来た時は本気で心配したが、そんな自分が恥ずかしくなった。
 こいつの性格を考えれば、心配するだけ損だというのは分かり切っていた事じゃあないか。
「病院なんて恥ずかしくて行けるわけ無いだろ! こ、こんな理由で……」
 語尾が段々と小さくなっていき、最後の辺りはとても聞き取れなかった。一度は勇気を出して言ったことではあるが、再度言う事にやはり抵抗があるのだろう。
「恥ずかしかろうがなんだろうが、それは医者の仕事だ。 ゆで卵が取れなくなったから助けて、なんて俺に言われ」
 言い切る前に俺の口がふさがれる。
「耕也の馬鹿ぁ! 声がでかいよ!!」
 顔を真っ赤にして抗議する。別にでかい声なぞ出してはいない。彰が神経質すぎるだけだ。
「むぐご、むがごぐが」
「とにかく、取れなくなっちゃったから、耕也に何とかして……ひやあ!?」
 俺の口をふさいでいた手の平を舐めてやった。予想通り、素っ頓狂な声を上げながら、手を離した。狙い通りだ。
「舐めた! 舐めた! ヘンタイー!」
 試しにゆで卵を突っ込んで抜けなくなった変態に変態と言われて軽くショックを受ける。
「お前が息も出来ないほど強く押さえ付けるからだろうが。その程度で済んでありがたいと思え!」
「え、そ、その程度って……。ほ、他になにするつもりだったのさー!?」
 言えない。乳を揉んでひるませるかどっちにするかで悩んでいたなんて。それを言ったらさらにコイツは騒ぎ立てるだろう。
「あ、で、でも……。耕也のしたい事なら考えなくもないよ?」
「やかましい!」
 危機感のない発言に呆れながら、軽く頭を小突いてやった。「あうっ」と短い謎のセリフを吐き、額をおさえるが……。
「あうっ、じゃねえ。キャラ作るな!」
「えへへー。可愛いでしょ?」
 確かにちょっと可愛い……。って違う、落ち着け俺。そうだ、念仏を唱えるんだ。
 コイツは男だ。コイツは男だ。コイツは男だ。コイツは……。
「あ、そうだ。見て見て。ブラも買って来たんだよ。ほら、似合う?」
「上着をまくるなぁ! 押し倒すぞコンチクショウ」
 と、思っただけのつもりが思いきり口に出してしまった。それだけ俺も取り乱していたという事だろう。
 あぁ、反応に困って顔を赤らめている。畜生、可愛いなあ、こいつ。
「あ、あの。えっと……。や、優しくしてくれるなら……良いよ?」
 今度は思い切り頭突く。流石に今度は「あうっ」などという余裕を見せずに頭を抱えてうずくまっている。ちょっとだけせいせいした。
「……ったく。今日の目的はなんだ? もう一回自分の口からちゃんと言ってみろ」
「えっと……。耕也との初体験を……」
 逃げられないよう頭を掴んで大きく振りかぶる。
「う、嘘ですごめんなさい! 卵です! ゆで卵!」
 あれほど恥ずかしがってたワードを連呼するとは。よほど頭突きが嫌なのだろう。次からふざけた事を抜かしたら頭突きが一番だな。
 そんな俺の考えが読まれたのか、明らかに五十センチくらい余計に距離を取っている。しかしそれは、今後も隙あらば問題発言をすると言っているようなものだ。
「そう。ゆで卵だろ。で、俺にどうしろっつうんだよ。指突っ込んで取り出せって言うのか?」
 無言でこくりと頷く。
「医者に行け」
「ヤダヤダヤダヤダーっ。そんな冷たい事言わないでよ~」
 玄関に向かって歩を進める俺と、その脚にしがみつく人間サイズのモップ――もとい、モップのような人間。
 足に伝わる感触から、男だったころに比べてかなり体重が軽くなった事が実感できた。
「病院なんかに行ったら、初対面のエロオヤジの前で股を開く事になるんだよー!? そんな辱めを僕に与えるつもりなの?」
 知らん知らん。
「検査と称したエロオヤジの触診に、気持ち悪いのに体は反応しちゃって濡れたりして、それが医者にばれていやらしく笑われたりー!」
 知らん知らん知らん。
「最後には、出てきたゆで卵を舐められながら『おやおや、最近の子は、ここを何に使うところかも知らないらしい。どうれ、先生が正しい使い方を教えてやろうじゃあないか。げっへっへっ』とか言いながら、汚らしい肉棒を突っ込まれるんだよー! それでも良いの!?」
「やかましい! んなわけあるか!!!」
 足もとのモップに向かって精一杯叫んでやった。いつの間にか結構部屋がきれいになっているじゃあないか。
「ったく……。お前の方がよっぽど声がでかいわ。外に誰か居たら確実に今の聞かれてるぞ……」
「ちょっとー、お隣さん。仲が良くて羨ましいけど、もっと静かにしてくれるー?」
 ……聞かれてるじゃないか、コンチクショウ。
「えへへー。仲が良い、って言われちゃったね」
 やかましい。コンチクショウ。

「よし、とにかく落ち着こう。このまま言い争っても、お隣さんにあらぬ誤解を植え付けるだけだ」
 もはや手遅れの気もしないでもないがな。くそ。
「僕は別に構わないけど……」
「構わないのはお前だけだ」
 むぅ、と残念そうな顔をするが、一切を無視して話を進める事にした。
「で、だ。お前、自分でやれる事はみんな試してみたのか?」
「当たり前じゃんっ。そうでなきゃ、恥ずかしくて相談になんか来れないよ」
 羞恥心が存在したという衝撃の事実にいささか驚きを覚えたが、それを口にするとまたややこしくなりそうだからぐっと堪える。
「ふむぅ。でも、俺にはお前がやった以上の事は何もできないぜ? 指で中を探るって言っても、お前もやってるんだろ?」
「んー。でもほら、僕の指、女になってからずいぶん小さくなっちゃったし。だから、もっと大きい手ならいけるかなぁって」
 言いながら目の前に突き出された手を見てみると、なるほど確かにかなり小さい。俺の方が、1.5倍……とまではいかなくても、かなり長いのは確かだ。
「ね? そんだけ長ければ届くかなぁ、って思わない?」
 うーん、確かに、言われてみれば……。
「だから、頼むよぉ。今日頑張ってもダメだったら、素直に病院に行くからさ。ね?」
 そうだなぁ。そこまで言うなら……。って、いかん。いつの間にかこいつの要求を受け入れそうになっているじゃあないか。
「だ、だめだだめだ! それなら最初から病院に行った方がよっぽど早いだろうが!」
「うぅ……。どうしても……だめ?」
「だめだ」
「どうしても……?」
「どうしてもだ」
 少し落ち込んでいるように見えるが仕方がない。申し訳ないとは思うが、こいつの変態プレイの尻拭いの手伝いをするつもりはさらさらない。
「仕方無い……。ごめんよ、変な事相談しちゃって」
 もう少し粘るかと思ったが、思いのほか素直に諦めてくれた。逆に怪しい気もしないでもないが……。
「病院ではなんて言おう……。やっぱり、彼氏がふざけて入れたら取れなくなった、って言うしかないかなぁ」
「待て」
 不穏な発言を耳に入れた俺は、玄関にとぼとぼと歩いて行く後姿に声をかけた。
「彼氏とは誰の事だ?」
 指をさされる。やっぱりか……。
「はぁ……。仕方ない、分かったよ。訳の分からんとこで汚名を着せられたらたまったもんじゃない。やるだけやってみるよ」
「本当!? やった、愛してるよ!!」
 脅迫しておいて何が愛しているだ。俺はお前のその腹黒さを一生忘れんぞ。

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