喫茶ま・ろんど

「なぁ、転校生ってどんなだった？　美人系？　可愛い系？　それともハズレ？」
「いや、びっくりしたよ、すっげ可愛いの。アレは大当たりだな」
　ふふふ、聞こえる聞こえる。僕を噂する男たちの声が。
「編入試験もかなり点数良かったんだろ？」
「そうそう。しかもアメリカに留学してたから英語もペラペラだってさ」
「くぁー。完璧じゃん。恋人に出来たら自慢だぜ」
　ふふふ、残念ながら僕の心と身体はもう予約済みなんだよ、ボウヤ達☆　……一歳しか違わないけど。
「アメリカ留学って言えば、志島先輩もそうなんですよね？　話、合うかもしれませんね」
「……先輩はやめてくれって。年上っつっても同級生なんだからさ」
「あはは、すみません、つい。志島さんの隣が空いてるから、もしかしたらそこに座るかもしれませんね」
「ほら、その敬語もやめてくれってば。……あんまり俺は興味無いんだけどなぁ、転校生」
「えぇー。それなら席代わって下さいよー」
「勝手に席替えは出来ないだろ」
　あぁ、耕也だ。耕也の声だ。今さらだけど、黙って転校してきて、怒られないかな。喜んでくれるかな。……うぅ、流石に緊張してきたよ。
　今のうちに計画を確認しておこう。
　最初の自己紹介でちゃんと耕也の婚約者だってみんなに伝えて、皆の前で耕也の意思を確認して、一気に公認の仲になって……。
　うん、計画は問題ないね。
　あ、そうだ。証拠として突き付ける録音テープの確認もしておこう。

「……らでも言ってやるよ。彰、愛してる。俺の恋人になって、一生一緒にいてほしい」
「……エッチな事もしたい？」
「そ、そりゃあ恋人ならな」
「……結婚もしたい？」
「あぁ！　もちろん結婚だってしたい！」
「じゃあ、約束ね」
「あぁ、約束だ」

　……うん、ばっちり。これで準備は万端だね。
「おぅらー。静かにしろー。ホームルーム始めるぞー。……えー、みな噂しているようだから説明はいらないと思うが、今日からクラスメイトが増える事になった。……入りなさい」
　よし、今日からはじめよう。新しい新木彰の人生を。
「はい、失礼します」