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前へ習えと言われたら、一番前で胸を張ってた。子供のころは嬉しかった。誰よりも前で、誰よりも特別で。
でも、僕だって男の子なんだ。そんなのを喜んでいたのは小学校の四年生まで。五年生になると、順調に背を伸ばしていく友人たちが羨ましくて悔しくて仕方がなかった。
僕と遊んだ男の子は、オカマの仲間とからかわれるから、誰も遊んでくれなくなった。もちろん女子の仲間入りなんて出来るはずもなくて。
中学校に入ると、学生服姿を笑われた。自分でもひどいなぁ、と正直思った。セーラー服のほうが似合うんじゃないの? と馬鹿にされ、否定できない自分が悲しかった。
人並み以上に性的な事には興味があった。でも、クラスメイトとはそんな話は出来なかった。
何かそれっぽい事を言うと「お前はそういうキャラじゃない」って。
僕に対して皆、距離を置いているように感じられて、やっぱり友達は出来なかった。
一人ぼっちの僕は、唯一優秀だった頭脳に頼って、成績の良さを褒められる事にしか喜びを見出せなくなっていた。
中学三年の春。僕はいつの間にか女子の平均も下回ってた。身長百五十二センチ。体重四十キロ。食べても食べても伸びない。鍛えても鍛えても太れない。
なんでもっと男らしくなれないんだろう。
そんな事を考えるのがいつの間にか癖になっていた。
染めてもいないのに淡い栗色を帯びた艶のある髪も、男らしくない丸みを帯びた顔の輪郭も、二重のまぶたも長いまつげも細い手足の指も何もかもが恨めしくなっていた。
そういえば、初めて女の子に告白したのも中学三年の時だった。学校でも一番人気の、他の誰より可愛い女の子だった。
十五歳なのに声変わりもしていない高い声が、緊張で更に上擦ってたっけ。
勇気を絞った告白の返事は失敗に終わった。
でも、悲しかったのは、振られた事よりもその理由だった。
「自分より可愛い男の子となんて付き合えない」
何でもっと男らしくなれないんだろう。
今までのどんな時よりも強く思って、僕は布団の中で泣いたっけ。
高校に入ったら何か変わると思ってた。あんな中学生活だったのに、僕はまだ期待してた。
もちろん、結果なんて言うまでもない。
入学式の日。自己紹介。未だに甲高いままの声を笑われた瞬間に僕の高校生活は幕を下ろしたんだ。
そんな人生だったから、日本に嫌気がさしたのも至極当然と言えたかもしれない。
アメリカ人からしたら、日本人なんて皆チビだし子供っぽい。それなら僕だって日本よりもずっとマシな生活が出来る筈。
そう考えた高校生活二年目の春。一年間の語学留学を理由に休学を決めた。
アメリカなら、僕もまともな生活が出来るはずだと信じて。
川原に通ってかき集めた、エロ本の束の処分だけが悲しかったけど。
「お前は心根が優しいからなぁ。危ない目に合わないか、お父さんは心配だよ」
「心配しなくても大丈夫ですよ、強い子なんですから。ね」
「ありがとう。大丈夫だよ。お父さんも心配しないで。僕、頑張ってくるからさ」
「まぁ、そう気負うんじゃないよ。勉強も大事だが、もっと気楽に海外の文化に触れて、造詣を深めてくると良い。……お前は好奇心も強くて積極的な明るい男だからな。あっちに行ったら友達も簡単に出来るさ」
お父さん……。
「うん、ありがとう。それじゃあ、行ってくるね。お父さん! お母さん!」
「体に気をつけてな。人間、体が無事なら何とかなるもんだ」
「気をつけてね。週に一回は手紙を送るのよ、彰」
「うん!」
こんな外見のせいで損した青春。アメリカで取り戻してみせるぞ!
「あら。お嬢ちゃん、一人旅? 頑張ってね♪」
……こんな悲しみ、少なくとも一年間は味わわなくて済むんだから、きっと。
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これはっ
まさか あれですか?
というか それなら今の言動からは想像できねぇ
どこで ああなるんだっ(笑)
もあ | URL | 2009-08-20(Thu)21:45 [編集]
これはっ・・・!!
もあさんお口にチャックっ!!
ゆう | URL | 2009-08-21(Fri)03:46 [編集]
>もあさん
コメントありがとうございます。
もうタイトル修正してしまいましたが、あのアレでございますw
あんまり期待されると不安になってしまうまろんどさんですが、よろしくお願いしますよw
>ゆうさん
コメントありがとうございます。
なんとなく、プロローグ部分の構成の都合でタイトルを伏せてみましたが、一日経ったところで修正しておきました。
というわけで、お口にチャックしなくても大丈夫なのでございんすw
まろんど | URL | 2009-08-21(Fri)20:14 [編集]
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