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お父さん。お母さん。
こっちに来て二週間が過ぎました。
最初は不安でいっぱいでしたが、こっちは、驚くほど優しくて楽しい人達ばかりです。
いつも冗談ばかり言っているマイケル。皆を引っ張るリーダーのボブ。可愛くて優しいシンディ。
日本ではあれほど苦労した友達作りが、驚くほど簡単で拍子抜けしました。アメリカに来て、本当に良かったと思います。
一つだけ不満なのは、晩ご飯が山盛りポテトかデリバリーピザのどちらかしか出ていないという点です。ジョシュアさんは「アメリカでは皆こうだよ」と言っていますが、僕は正直半信半疑です。
今度、僕が料理を作ると言って、違うものも食べられるように頑張ろうと思っています。
それでは、また。
彰からの最初の手紙。何が書いてあるか不安だったが、とても楽しそうで本当に良かった。
ただ、お父さんは出来れば日本人の友達も作って欲しいなぁ、と思っているよ。今はまだ難しいかもしれないが、勇気が出来たら頑張って欲しい。
しかし、本当に彰が料理なんか出来るのかい? 家では「女の子みたいで嫌だ」と言って手伝いもしなかったじゃあないか。
もし、美味くできたなら、日本に帰ったときにはお父さんも食べたいな。まだずっと先の話だろうけど、覚えておいてくれるとうれしいよ。
父より。
「アキラ、ちょっと勉強教えて欲しいんだけど」
「シンディの頼みなら喜んで☆ どこだい?」
「あぁ、なんだよ。アキラには俺が質問したかったのに」
「こっちが終わったら聞くから焦らない焦らない。ボブが聞きたいって事は、数学かい?」
「あぁ、あのオッサン、教え方が下手すぎるんだよ。アキラが教師をやるべきだね」
「あはは。それは大げさだよ」
「大げさなもんか。アキラは間違いなくこのクラスの救世主だよ。アキラの指導で、確実にこのクラスは平均点を上げてるからな」
「いやぁ、救世主だなんて、照れるなぁ」
アメリカに来て二ヶ月。確かに期待はしてたけど、皆、本当に普通に接してくれるなぁ。あまりの自然さに、最初のころ、影でこっそり嬉し泣きしてたもんなぁ。
「しかし、アキラも変わってるよなぁ」
「ふえ? なんで?」
「だって、日本人はたいてい日本人クラスに入って身内で固まってるのにさ。俺たちと同じクラスに入りたいってわざわざ頼み込んだんだろ?」
あぁ。その話かぁ。
「そうよねぇ。アキラって、他の日本人と違って日本人同士でつるまないし。何か理由でもあるの?」
「あははは。こっちには一年しか居られないからね。せっかくなんだからこっちの人たちと一秒でも多く接したいじゃない」
なんてね。日本人は皆僕の事笑うから苦手、とは言いづらいよね。
「あーあ、また出た。アキラのマジメ発言。アキラって本当にマジメ馬鹿よね。もう少し遊びも覚えないと、女の子にもてないわよ?」
「あれ、シンディは知らないんだな。アキラのヤバさ」
「あら、なによそれ」
「いやー、まぁ、その……ははは」
「アキラが大好きなのは勉強だけじゃあないって事さ。女みたいな見た目して、下手な男よりよっぽどエロイからな。男だけになると、案外盛り上がるんだぜ」
「本当にー? 可愛い外見からは想像も出来ないわね。からかってるんじゃないの?」
皆、僕のことを当たり前に可愛いとか言ってくるけど、いつの間にか気にならなくなったなぁ。日本に居た時と違って、馬鹿にした言い方じゃないからだろうな。素直に僕のことを可愛いと思って褒めてくれてるから。
でも、やっぱり男だからなぁ。可愛いよりも格好良いって、いつか言ってもらいたいよ。
「本当だって。こないだだって、シンディの育てたスイカが食いたいって言ってたんだぜ」
「ぼ、ボブ! その話はぁ!」
「はぁ? どこがエロいのよ。第一あたしんちはスイカ農家じゃないわよ?」
うんうん、そうだよね。全然エロい話じゃないよね。はい、だからこの話は終了おしまいさようなら。
「ははは、シンディも察し悪いなぁ。あるだろ、十六年物の立派なスイカが二つ」
うあああぁぁぁぁ……。し、死にたい……。
「……本当にアキラがそんな事言ったの!? うわー。信じられないわ。ちょっと、今度その男だけの集まりって奴にあたしも参加させてよ」
僕と入れ替わりで良ければ喜んで。僕はその日は旅に出ます。
「それなら、来月の独立記念日はどうだい? 皆で集まってバーベキューパーティーの予定だったけど、男三人じゃあ寂しいからな。他に予定が無ければシンディも参加しないかい?」
「あら。その日は女子の集まりに行く予定だったけど……でも、アキラの事も気になるしね。ぜひそっちに行かせてもらうわ」
あうあうあうあう……。
「オッケー。それじゃあ、アキラ。今年の独立記念日はお前が主役だからな。絶対欠席するなよ」
逃げられそうにないよう……。くそぅ、こうなったらヤケだ。楽しめるだけ楽しんでやろう。
お父さん。お母さん。時の流れは速いものです。日本にいたころは一日が終わるのすらとてつもなく長く感じていたのに、こっちに来てからは本当にあっという間に感じています。
日本に居たころは中々出来なかった、男同士の馬鹿みたいな会話も、こっちでは毎日のようにしています。たまに二人(特にボブ)が、その内容をシンディにばらしてしまうのが悩みですが、それも不思議と嫌に感じません。
それはきっと、皆が友達だからなんだろうなぁ、と思いました。
「ほれ、アキラ。もっと食えって。まだまだあるぞ。早くしないと、ボブと俺で全部食っちまうぜ?」
げふぅ……。だから四人で食う量じゃあないってばさ……。
「ていうか何で肉しかないの。このバーベキュー」
「何言ってるんだ? こんなに色々あるだろう。ビーフステーキにフランクフルト。特製ハンバーグにラムチョップ。よりどりみどりじゃないか」
全部肉じゃん……。
「そんな組み合わせが平気で出来る辺りが大雑把なのよねぇ、男衆は。はい、アキラ。家で作ってきたんだけど、コレでも食べてちょっと気分を変えると良いわよ」
「あ、ありがとうシンディ」
正直限界だったから助かるよ。お口直しにいただきます、と。
「どう? 特製ミートローフ」
げふっ。
「うわっ、アキラが倒れた! ちょっとボブ。水持ってきて、水!」
バーベキューの匂いが強くて気付かなかった……。ていうかなんで僕はコレをシフォンケーキだと思い込んだんだ……。形の魔力、恐るべし……。
ただ、悩みがあります。マイケルもボブもシンディも、そしてジョシュアさん夫妻も、こっちの人は皆おかしいくらいに肉が好きです。肉をおかずに肉を食べて、牛肉を食べ飽きたら豚肉を食べています。
それに付き合わされて、僕もいっつも倒れるまで食べさせられています。
日本に居たころより三倍くらい食べているような気がするけど、それでもちっとも太れないのは、やっぱりそういう体質なのかな。皆にもそこは不思議に思われています。
「お菓子をくれなきゃいたずらするよー」
「あら、可愛いお化けだこと」
「というかアキラ、お菓子集めは子供の役目だぞ」
「むぅー。別に良いじゃんー」
日本じゃハロウィンなんてメジャーじゃないんだから。ちょっとくらいハロウィンらしい事したいんだよぅ。
「はは、アキラなら十二歳って言っても信用してもらえそうだからな。少しくらい良いんじゃないか?」
「ぬぅー。ボブ、それはひどいよー」
「全くだ。本当の事でも言い方には気をつけろよな、ボブ」
「そうそう。アキラだって男の子なんだから、そこは思ってても黙ってあげないと」
ぬぅー。みんな、もう!
「だったらイタズラしてやる! てぃ!」
「あん、ちょっと! アキラ、どこ触って。ん……!」
ふふん、シンディの弱点がわき腹だってのは分かってるんだ。そぅれそぅれ!
「くふ……! ち、ちょ……っ! んぅ!」
「悶えるシンディ……。エロいよなぁ」
「あぁ……。っていうかアキラ良いなぁ。俺達があんな事したら、絶対殴られてるぜ」
「だよなぁ。男でも可愛いって得だわー」
「それそれっ! 止めて欲しければお菓子をよこせぇー!」
「ぁふ……! わ、分かった。分かったから止めてぇ!」
ふっふっふっ。勝利。
「はぁ……。はぁ……。はぁ……。それじゃあどうぞ、お菓子じゃなくて果物だけど」
え。
「遠慮なく食べて良いのよ。好きでしょ? スイカ」
「い、いや、確かに好きだけど、その。それは倫理的にまずぐぇっ」
「ほらほら。たくさん味わってね。お味はいかが?」
お、重……! ていうか、い、息が……苦し……。
「味わうときは噛んじゃ駄目よ? お姉さんとの約束、ね」
「あー。アキラとかわりてぇ」
「全くだな、兄弟」
こうして日本を離れている間に、少しずつ僕も大胆になってきたような気がします。
自分では分からないけど、皆に聞くと、口々に「最初のころのアキラはよそよそしかった」と言ってきます。
それが日本人特有の遠慮なのか、それとも僕の内気さが理由だったのかは分かりません。
どちらにせよ、僕自身、日本に居たころよりも自分が大好きになりました。
作り笑いじゃなくて、いつでも心から笑えるようになって。失敗を恐れないで、自分から思い切りいろいろな事に飛び込めるようになって。
アメリカに来て、本当に良かったと思っています。
「ハッピーニューイヤー!」
「イェーイ!」
こ、この国の正月はおかしい。普通はコタツでみかんで駅伝じゃないの? いや、駅伝は無いだろうと思ってはいたけど、このお祭り騒ぎは明らかにおかしいよね。
「ほら、アキラー! お前も参加しろって!」
え? 参加って何に?
「ボブの発射するロケット花火を全部避けたらアキラの勝ちだからな。よーいスタート!」
え。ぬぉえあ!?
「お、うまいうまい。ほら、今度は五連続で行くぞー」
危なっ! マジ危ないって! 人に! 向けては! いけ! ません!
「おぉ。すごいすごい。マイケルとタイ記録だ。じゃあ、次の二十連発はかわせるかー?」
に、にじゅう!? それは物理的に無理!
「頑張ってー。アキラー。全部避けたらおっぱい触らせてあげるわよ☆」
なんと!? そうと聞いたら話は別だよ。新木彰様の本気を見せてやるぜ!
「それ、まとめて……発射!」
最小限の動きで……とう! ほっ! はっ! ていりゃあ!
「ぬぅ、相変わらずエロが絡むとアキラの動きはすごいな」
「だなぁ。というか、最初のころはとてもあんな奴だとは思えんかったんだがなぁ」
「あぁ、イメージ変わったよなぁ」
これで……全段回避!
「すっごーい、アキラ、新記録よ!」
「はっはーん! シンディの応援があったからさ。さぁて、それじゃあ約束どおり、おっぱいプリーズ!」
「はい、みんなー。特製ハンバーガーが出来たわよー」
「あ、サラさん、ありがとうございます。いただきますね」
がふっ。
「お、おっぱい……」
「流石にサラさんの前ではまずいでしょ? ゴメンね☆」
おっぱいぃ。シンディのおっぱいー……。
でも、アメリカに来て良かったと思えるからこそ、今度は別れが惜しくなってきました。
もう、日本に帰るまで二ヶ月きってしまっています。仕方のないことだと分かってはいるけれど、その事実が悲しくて仕方がありません。
僕は、日本に帰っても明るいままでいられるのかな。
「化石発掘ツアーのチケット?」
「おうよ、アキラにプレゼントだ。男なら好きだろ? 化石。二週間の長旅だけど、楽しんで来いよ」
うぅーん……。困ったなぁ。確かに嫌いじゃあないけどさ。もう三月も近いし、今は一日でも長く皆と一緒に居たいよ。
「あれ、アキラ、化石嫌いだったか?」
「ほら、だからマイケルに探させるなって言ったのよ」
「仕方ないだろ、いきなり言われても丁度二週間のツアーなんてこれくらいしか見つからなかったんだよ」
ふえ? 二週間のツアー?
「馬鹿! マイケル、それ言ったら!」
「えっと、詳しく話してくれる?」
「あーぁ……マイケルの馬鹿……」
マイケルがいつもの調子で失敗して僕にばれちゃったけれど、皆が、日本に帰る僕のためにサプライズパーティーを準備してくれるのだそうです。
マイケルの家を和風に改装して驚かせたかったから、その準備のために二週間くらい旅行に行ってもらおうとしたそうです。
結局ばれちゃったからほとんど意味は無いけど、せっかくだから、気付かなかった事にしてパーティーの準備をしてもらおうと思います。
次の手紙では、化石発掘ツアーの感想が書けると良いかなと思います。
それでは、また。
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実は ホームステイ先のパパさんが
とてもいい味だしてるんじゃないだろうか。
そして変態の片鱗がそろそろ見え隠れしていることと、
化石ツアーに安堵している自分。
もあ | URL | 2009-08-23(Sun)01:11 [編集]
>もあさん
コメントありがとうございます。
こうして、アメリカで過ごす間に、徐々に本来の性格を表に出せるようになってきた風な感じが伝わるととても嬉しいまろんどさんなのですが、いかがでしたかね。
そしていよいよの接点「発掘ツアー」なのですね。
この辺りから本来のゆでたまっ!ぽい酷さがにじみ始めているような気がしますよ(ぇ
まろんど | URL | 2009-08-23(Sun)20:20 [編集]
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