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喫茶ま・ろんど

TSFというやや特殊なジャンルのお話を書くのを主目的としたブログです。18禁ですのでご注意を。物語は全てフィクションですが、ノンフィクションだったら良いなぁと常に考えております。転載その他の二次利用を希望する方は、メールにてご相談ください。

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ゆでたまっ!零個目4 出会い

 化石の発掘だって? 彰、すごいじゃないか。ティラノサウルスでも発掘すれば、一気に有名人だな!
 しかし、そんな事までするようになったんだな。お父さんは日本に居たころの彰しか知らないから、行動的な彰が想像もできないよ。
 お前は日本に帰ってくるのが寂しい、と言っているが、そんな、元気な彰に会えないお父さんとお母さんも寂しがっているよ。日本にも、こうして彰を待っている人が居るんだという事を忘れないでくれると嬉しいよ。
 父より。


 しーほうーにみーわたーすちーへいせんー。ぽーつんとたたずむけーんきゅうじょ。
 っとね。しかし凄い風景だなぁ。あっちの地平線とあっちの地平線を結んだら、日本列島より広くなるんじゃあなかろうか。
「はーい皆さん。長時間の移動大変お疲れ様でした。この建物が、これから二週間、皆さんが寝泊りしながら発掘作業を行う宿泊施設兼研究所です。お疲れのところかとは思いますが、この後、研究所内において今後の説明が行われますので、もう少しだけ辛抱をお願いいたしますね。それでは皆さん、存分に楽しんでください」
 あぁ。バスが行ってしまった。これでもうどうあがいても二週間は帰れないんだなぁ。なんせ、三時間以上標識以外の人口建造物が一つも見当たらなかったからなぁ。思い切り陸の孤島だよね。


「皆さん、遠くからはるばる、ようこそいらっしゃいました。私が当研究所の副所長を務めております、志島小百合と申します」
 シジマサユリ? 日本人でしかも女性の副所長なんだね。すごいなぁ。
 でも、そうかぁ。日本人かぁ……。どうしても苦手意識が出てくるなぁ。
「それではこれより、研究所長から発掘に当たっての注意点が説明されます。大事な話ですので、皆さん、しっかりと聞いてくださいね」
 いけないいけない。初対面で決め付けちゃいけないよね。
 しかし、あの人も発掘作業してるんだろうなぁ。細そうに見えて結構筋肉質だし、日に当たり過ぎるせいか傍目にも髪の毛がちょっと傷み気味だし。だからあんなに短くそろえてるのかもね。働く女! って感じで格好良いけど。
「全員、きりぃつ!」
 うぇあ!? 何!? 何何!?
「私が所長の志島聡だ! 所長を出迎えるというのに椅子に座りっぱなしとは……。貴様ら、本当に発掘をする気があるのかぁ!」
 怖っ! このオッサン、怖っ! その筋肉質な体でその物言いは怖すぎるよ! ていうかなんでサングラスしてるの!? 身長百八十近くて日焼けで肌真っ黒で。もしも髪の毛がパンチパーマだったらまんまアッチ方面の人じゃん!
「おい、そこのメガネ! 貴様らは何だ。言ってみろ!」
「へ? わ、私ですか。え、ええっと、このツアーの参加者で」
「違ぁう!」
 ち、違わない! と思うんですけど!?
「貴様らはクズ、いいや、クズ以下だ! 何故なら発掘しか意味を成さないこの場所で、未だ一つも化石を掘り当てていないからだ! 化石を掘り当てるまで貴様らには一片の価値もない! 未だ発掘を始めていない貴様らはクズ以下の下等生物なのだ!」
 えぇー。
「悔しいか!? 悔しかったら今すぐ化石を掘り当ててみせろ! 掘り当て、一歩でも人間様に近づいてみせろ! それができん限り、貴様らはゴミムシだ! それが分からん奴は今すぐ出」
「所長、ちょっとこちらへ」
「……あ、はい」
 あ、副所長さんと外へ……。
「痛っ! 痛いよ、小百合!」
「誰が悪いと思ってるの! 私が今朝言った事を復唱してみなさい!」
「え、えぇっと。現在当研究所はきわめて厳しい財政にたたされており、一人でも多くのツアー客に集まっていただく事が命題である。そのためには、全てのお客様に存分に楽しんでいってもらう事が研究所の未来につながるのだという事を忘れてはいけない……。です」
「分かっているなら! なんです! あの演説は!」
「痛っ! ごめんなさい! 小百合さん、ホントごめんなさい!」
 ドア越しにも丸聞こえです……。日本語だから他の人は分からないだろうけど……。
 あ、帰ってきた。
「……えー。皆さん、失礼しました。あまりの盛況ぶりに少し取り乱してしまったようで。では、改めて所長からのお話をどうぞ」
「うむ……」
 なんだったんだろう、今の一連の流れは……。
「ではそこのノッポ! 化石とは何か、貴様なりの考えを言ってみろ!」
 ……あ、副所長さんが震えている。
「え? ぼ、僕ですか? えぇと、ろ、ロマンとか」
「違ぁう! そんな事も分からんのか! 化石は我らの王だ! そして貴様らは王に仕える奴隷なのだ! 貴様らは今から地面に這いつくばり化石様のためにその命を削るのだ! 貴様らは化石様の万分の一の価値もありはしないクズだ! カスだ! ゴミだ! それも分からん奴に発掘する資格はな」
「しょ・ちょ・う?」
「……あ、はい」
 あ、また外へ……。
 ………………あれ、今度は静かだなぁ。あ、もう帰ってきた。
「えー、所長は不慮の事故で説明が出来なくなりましたので、私から説明させていただきますね」
 怖っ! 不慮の事故怖いよ!
「細かい発掘の仕方は後ほど改めてご説明しますので、今は重要な点だけ説明させていただきます。まずは服装ですが、必ず長袖の動きやすいものを着用してください。また、靴も同様に、登山靴など歩きやすいものを必ず利用してください。持っていない方は、どちらも無料でお貸し出来ますので必ず申し出てください。それから、化石らしきものを発見した際は、必ず作業を続ける前に近くの研究所員に声をかけてください。それがもしも学術的に価値の高いものである場合は、申し訳ありませんがこちらで発掘を引き継がせて頂きます。また、学術的に価値が高いものは持ち帰ることが出来ませんが、レプリカを作成し、後ほど郵送しますので、その点ご理解をよろしくお願いいたします。それから――」
 まぁ、全部事前に渡された契約書に書いてある通りの内容だね。念のための確認、って事かな。
「――と、説明は以上です。何か質問はございますか?」
 所長は生きてますか? ってすごい聞きたい。誰か聞いてくれないかなぁ。
「あのー。所長さんは」
「はい。それでは本格的な発掘は明日から行われます。皆さん、今日はごゆっくりお休みください」
 打ち切った! 本格的に怖い!
「あ、そうそう。えーっと……。アラキさん、いらっしゃったら、少し残っていただけませんか」
 え?


「あの……。僕に何か……?」
「まぁ、すごい可愛い子だったのね」
 う……。褒めてるつもりなんだろうけど……。
「いえね、このツアーって国内向けな上にマニアックだから十代の日本人が参加するなんて凄く珍しいのよ。だからどんな子かちょっと興味があったの。ごめんなさいね」
「あ、いえ」
「それでね、気付いていると思うけど、私と所長、苗字が同じでしょう? 実は夫婦なのよ」
「あ、そうなんですか?」
 正直、そんな疑問に意識が向きませんでした。あの状況では。
「えぇ。それで偶然なんだけどね、あなたが私たちの子供と同い年なのよ。だから、もしあなたさえ良かったら友達になってもらえないかな、って。……どうかしら?」
「友達……ですか?」
 二人の子供って事は、当たり前だけど日本人って事だよね……。どうしよう。もともと日本人との付き合いが嫌でこっちに来てるんだしなぁ……。
「私と小百合が二人で役職についてしまったせいであの子のいる日本に帰ってあげられなくなってしまってね。寂しさもあり、去年からこっちに呼んで一緒に暮らしていたんだよ。あの子自身は発掘が大好きだから見た目は元気そうなのだが、こんなところだろう? 同年代の友達が一人も居なくてねぇ。不意に寂しそうな顔をする事があるのだよ」
 あ、所長さん生きてたんですね。ていうか喋り方普通ですね。
「あ、この人、発掘が絡まないと普通なのよ」
「あ、そうなんですか」
 ……今、さらりと心を読まれたような。
「ま、そんな訳で、友達になってやってもらえないかな。このとおり、頼むよ」
 うーん、頼まれごとには弱いけど……。でもなぁ。
「親のわがままと言ってしまえばそれまでだけど、一人ぼっちで寂しそうにしているあの子を何とかしてあげたいの。だめかしら」
 一人ぼっち……。そっか、ちょっと僕と似てるのかな。日本で一人ぼっちだったからアメリカに来た僕と、ちょっとだけ。
 ………………うん。
「分かりました。僕で良かったら喜んで友達になりますよ」
「本当かい!? そう言ってもらえると嬉しいよ。丁度もう戻ってくるころだと思うんだ。少し待っていてくれるかい」
 って、つい返事しちゃったけどどんな人なのか全く分からないな。この所長さんみたいな人だったらどうしよう。俺と友達になりたければまずは化石を掘り当てろ! みたいな。
 うぅ、そう考えると安請け合いだったかな。ちょっと不安になってきたよう。そういえば、そもそも男の子なのか女の子なのか。
 あうぅ、考えれば考えるほどに不安が……。
「父さん、化石のクリーニング終わったよ。あっちに置いてあるから後でチェックしといて。……あれ」
 わ、目が合った。うわ、お父さんに負けず劣らず背が高くて筋肉質だなぁ。百七十五、いや、もうちょっとあるかな。それに肌がしっかり焼けてていかにもアウトドア! って感じが。やっぱ発掘してると日に焼けるんだろうなぁ。
「おぉ、耕也。お疲れさん。ちょっとお前に紹介したい子が居るんだよ」
「紹介したい子?」
「あぁ、今回のツアー客の一人なんだけどな。お前と同い年の日本人なんだよ。もしかしたら仲良くなれるんじゃあないかと思ってな」
 うわっとっと、いきなり話を振られると。
「あ、は、初めまして。新木……彰です」
「え、あ、は、初めまして。えっと、志島と言います」
 ………………困った。何話そう。えっと、えーっと……。
「し、志島君は巨乳と貧乳どっちが好きですか?」
「……へ?」
 ……しまった、はずしたっぽい。最近マイケルと一番熱く語ったネタだったから無難だと思ったんだけどなぁ。
「………………別に、どっちでも、かな」
 うぅ、痛い。その冷静な口調も不思議な生物を眺めるかのような視線も全てが痛いよ。
「……あ、いや、でもやっぱ、その、小さいほうが……」
 む!? 好機! ここから話を広げるんだ!
「ほほぅ、何でそう思う? やっぱり大きいと馬鹿っぽいとか?」
「え、いや、あ、その、なんだろ。大きいと重くて大変そうだな、とか?」
「重くて大変? ほほう、という事は志島君は自分の上に乗ってほしいんだね。いやぁ、なかなか大胆だねぇ」
「え、いや、そ、そういうのじゃなくて、その、女の人が大変そうだなって。ほら、重くて肩が凝るとか言うし」
「相手の子に気を使うなんて、いやー、志島君って見た目と違って優しいんだねぇ」
「あはは、や、優しいとか、そんな」
 うん、やっぱり男同士はまず下ネタだよね。一瞬で二人の距離が縮まった気がするよ。初対面は大成功。良かった良かった。
「おぉ、早速あんなに仲良さそうにして。やはり新木さんに相談してみて良かったねぇ」
「……ちょっと会話の内容が気になるけど、そうですねぇ」
「なぁに。若いんだからあれくらいの話が丁度いいというものさ。はっはっはっ」
 あ、しまった、そういえばご両親の前だった。……まぁ、気にしてないみたいだから良いか。
「じゃあ、僕の事は彰って呼んでよ。呼び捨てで彰。仲良くなるにはまず呼び方から、ね」
「じゃあ、俺の事も……?」
「うん、志島君さえ良ければ、耕也って呼ばせてほしいな」
「も、もちろん構わないよ。あ、彰」
「うん! よろしくね! 耕也」

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コメント


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ゆう

彰の性格はアメリカ産だからだったのかー!

| URL | 2009-08-23(Sun)22:14 [編集]


>ゆうさん
コメントありがとうございます。
そうですねw
元々心中にそういう要素を秘めていたのが日本では発散できずに溜まっていたところ、アメリカというおおらかなお国柄に触発され、一気にそっち方面に開発されていってしまった……。
という感じだときっと自然ですよね?(何

まろんど | URL | 2009-08-24(Mon)19:21 [編集]