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喫茶ま・ろんど

TSFというやや特殊なジャンルのお話を書くのを主目的としたブログです。18禁ですのでご注意を。物語は全てフィクションですが、ノンフィクションだったら良いなぁと常に考えております。転載その他の二次利用を希望する方は、メールにてご相談ください。

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本当にろくでもないグリム童話~ヘンゼルとグレーテル~

 あるところに、ヘンゼルとグレーテルという兄妹がおりました。二人は毎日とても幸せに暮らしていましたが、両親はそんな二人を、金も稼げない無駄飯ぐらいだと考えて嫌っておりました。
 まあ、当然でしょう。
 兄のヘンゼルは少なくともここ二年は一度も家から出たことのないひきこもりで、当然ニートのしかもエロゲばっかり買いまくるオタクだったのですから。
 やることと言ったらエロゲとにちゃんねるばかり。夜は空の白むまで起き続け、朝方から日が沈むまでひたすら寝続けます。ようやく夕方頃に起きたと思ったら最初にやるのはパソコンを起動しての常駐スレチェック。スレの伸びが悪いと思えば、必ず煽り、裏ではエロゲも起動しながら器用に同時進行させます。
 フヒヒと笑うのがとても得意で、隣の国とマスコミが大嫌い。いつでもテンプレートな発言を忘れません。
 そして、マスコミが嫌いと言いながらも、いちいちテレビを見ながら、
「ジャニーズうぜぇ」
 だとか、
「捏造乙」
 だとか、
「NHK以外は全部カス」
 だとか、
「むしろNHKもカス」
 と呟くのは忘れません。無論、本人は受信料を払っていませんが。ええ、払っているのは親です。
 また、高校中退という学歴からも分かる通り、勉強はあまり得意ではありません。
 例えば「AKB48+紳介ファミリー+KARA」なんていう二ケタの足し算もできないのです。
 そして妹のグレーテル。彼女も当然のように働いておりません。かといって、兄のようなひきこもりではありません。
 そう。彼女は三度の飯よりジャニーズが大好きで、その中でも特に、ちょっと危険を感じるので敢えて名前は伏せますが、某グループを御本尊と崇め奉り、T×Gのヘタレ攻めが大好きというちょっとレアなカップリングを愛する女の子なのです。年に二回の本をクリエイトする作業も欠かしません。
 完全に腐ってます。早すぎましたね。
 そんなわけで、ファンクラブに入っていたり、コンサートに欠かさず行ったり、グッズを買い揃えたりと、お金が幾らあっても足りません。親もお金を渡さなければ良いのでしょうが、そうしなければ暴れるやら叫ぶやら親の財布から金を盗むやらと、屑の所業に暇がありません。それほどまでにス……某グループが大好きなのです。
 でも、そんなグレーテルに「スマップ+キンキキッズ」という計算をしてもらったら、
「8」
 と答えました。どうやらグレーテルも、算数は苦手のようですね。
 さて、そんな無駄飯ぐらいを二人も抱えて、家の財政がもつ筈がありません。
 特に今年は折からの不況の風も厳しく、給与削減にボーナスカット、更には残業禁止のお達しが出たため、父親の給料の減りようと言ったら無かったのです。
 母親も、パートで月に九万円を稼ぎ出していましたが、全く焼け石に水です。
 世知辛いですね。ファンタジーなのに生々しくて嫌になります。
 ともかくそうして遂に、両親は、二人のダメ人間を切り離すことを決意したのです。
「兄貴! 兄貴ってば!」
 なんだか微妙なまぐさいにおいのするヘンゼルの部屋へ、グレーテルが駆け込みました。
「うるせぇぞ、ビッチが! 入ってくんじゃねぇよ!」
 ジャニーズになら簡単に股を開くだろうグレーテルのことを、ヘンゼルはあまり名前では呼びません。この辺りもテンプレートですね。
「んなこと言ってる場合じゃないって! 見てよこれ!」
 そう言ってグレーテルは、一枚の手紙を突きだしました。
 そこには、こう書いてありました。
「もうあなた達の面倒は見れません。これからは自力で生活しなさい。私たちは、この家を売ったお金で別の県にマンションを買いました。せめて野垂れ死にしないよう、あなた達二人に住み込みの仕事を探しておきました。別紙の住所にあるおばあさんの所に行きなさい。この家は、今日中に立ち退くようにね」
 結構スパルタですね。
「どうしよう。うちら、ここ出なきゃいけないの?」
 グレーテルは慌てました。
 しかし、ヘンゼルはとても冷静です。
「情弱乙。立ち退かなくて全然大丈夫だから。俺らが住んでる限り、立ち退かせる方が法律違反になるから。気にせず住めばおk」
 生活費の問題を脇に退けた上で、ネットで仕入れただけのおぼろげな知識を得意げにひけらかします。しかし、世の中はそんなに甘くは無かったのです。
 それは、数分後、家のチャイムが鳴り、パンチパーマデバッチリ決めた、高級そうなスーツ姿のお兄さんが来た時に思い知らされることになりました。
「おーう。お前ら、まだ居るんか。わしらの仕事の邪魔やけんの。とっとと出てかんかい、おら」
 間違いなく、関わってはいけない人種です。ご両親ったら、どんな相手に家を売ったのかしら。
 しかし、ヘンゼルも負けてはおりません。男の前に立ちはだかり、口を開きます。
「ぼ、ぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼびべあれ」
 ダメでした。まあ、パラヒキニートが他人とまともに話せるわけがありませんね。内弁慶の典型例です。
「あの、私たち、いきなりこんなことになって、どうしたら良いか分からないんです……。なんとかこれまで通りここに住めませんか?」
 それなりの対人スキルを持つグレーテルが、恐る恐ると声をかけます。
「ああ? んー、まあ、条件次第では住まわせてやれんこともないが……そうじゃのう。んー。姉ちゃんはちょっと器量が悪いが――まあ、スカ系辺りになら需要があるかのぉ。こっちのデブは――んー、これじゃあマグロ漁船も買ってくれんじゃろなあ。……ああ、ちょっと表には出せん話じゃが、沢ガニの撮影を実際にやってみたいちゅう奴がおったのお。そこになら売れるかもしれんか。しかし、その体格でドラム缶に納まるかどうか――」
「今すぐ出ていきます!」
 内容はほとんど分かりませんでしたが、二人は危険を察知し、三十分で荷造りをして飛び出して行きました。
 こうして、二人は家なき子となったのです。



 ヘンゼルはノートパソコンと持てるだけのエロゲを。グレーテルはリュックに詰めるだけの同人誌を持って、手紙に残されていた住所へと向かいました。
 しかし、ヘンゼルはここ二年、一歩も家から出たことのない猛者中の猛者です。久しぶりに浴びる太陽の光には目眩を覚え、あるはずのない視線に怯え、たいそう挙動不審になっております。以前とは町並みも変わっており、記憶もおぼろげで道が全く分かりません。
 不安に包まれたヘンゼルは、グレーテルの背中にぴったりと寄り添うように歩きました。そして、何かあった際、すぐに自宅(もう自分の家ではないのですが、きっと何かの間違いだろうと都合よく信じ込んでいました)に帰れるよう、こっそりとグレーテルのリュックから同人誌を抜き取り、目印として数メートルごとに地面へと放り投げました。これはきっと後でグレーテルに頃されることでしょう。
 しかしヘンゼルは気付きませんでしたが、二人が去った後、道に落ちた同人誌たちは、群がる腐女子達によって全て回収されてしまいました。それはあたかも、パン屑に群がる小鳥たちのようでした。最早同人誌がグレーテルの元に戻ることはありません。これは間違いなく、ヘンゼルは転されてしまうことでしょうね。ハハ、ワロス。
 失礼。ともかくそうして二人は、書き遺された住所の場所へと辿り着いたのです。



 住所の場所で、二人は大層驚きました。そこには、とても立派なお菓子の家が建っていたのです。
 壁はビスケット。窓は飴。扉はチョコレート。門柱はチップスターで煙突はトッポ。庭にはたけのこの里ときのこの山が咲き乱れています。そして、そのどれもこれもが、普通には売っていないような特大サイズの物ばかりです。もしかしたら近くの(社会情勢を考慮し自主規制)巨大化したのかもしれませんね。
 チョコモナカジャンボの表札には「岡」と名字が書かれていました。
 そう、つまりこの家は、お菓子の家であると同時に。岡氏の家でもあったというわけです。このギャグを考えた人は、反省してください。
 ともかく、そんな家を見て、二人は声を揃えて言いました。
「建築基準法とか、大丈夫なん?」
 メルヘンの欠片もない真理です。
「おお、あんたらがヘンゼルとグレーテルかい。待っていたよ」
 不意に扉が開き、中から背中を丸めた全身黒ずくめのおばあさんが出てきました。とんがり帽子をかぶっているその姿は、まるで魔女のようです。
 でも、名字は「岡」ですからつまり日本人ですよね。
「あんたらの親に頼まれてるからね。しっかり働いてもらうよ。丁度人出が足りなかったんだ。さあ、家にお入り。ひっひっひっ」
 そう言っておばあさんは二人を家へと招き入れました。
 家の中も、当然お菓子で溢れかえっており、むせかえるような甘い匂いに包まれていました。もう匂いだけで胸やけしそうです。
「それで……仕事っていうのは何をすれば良いんですか」
 グレーテルが聞きました。
「働きたくないでござる」
 ヘンゼルが呟きました。
「ああ、なあに、簡単な仕事さ。あんたらみたいなロクデナシでも出来るようなね」
 ヘンゼルを無視しながら、おばあさんはちょっとだけ毒を吐きました。
「見た通り、この家はお菓子で出来ているだろう。けど、そろそろ賞味期限が近付いてきていてねえ。隣の土地に新しいお菓子の家を建てて、古い方は全部食べて欲しいのさ」
 賞味期限とか。半端にリアリティを持ちだされると少し困りますね。
「はあ……ということは、その家が建つまでの仕事ってことですか」
 グレーテルは困りました。住み込みの仕事だと聞いていたのに、これではすぐに仕事がなくなってしまいます。
「いやいや、そんなことは無いよ。新しいお菓子の家もそう長くはもたないだろうからね。新しい家ができたら、また前に建っていた場所に新しいお菓子の家を建てて、古い方を食べるんだ。食べ終わったらまた新しい家を建てて古い方を食べる。その繰り返しだよ」
 なんだか不毛です。掘った穴を埋めさせられる囚人の気分です。
「……なんでそんなことするんですか?」
「そんなことって?」
「なんでわざわざお菓子の家を建てるのか、ってことです」
「そりゃあ古い家を食べたら住むところが無くなってしまうからさ」
「……なんで古い家を食べてしまうんですか?」
「そりゃあ、早く食べないと賞味期限が切れてしまうからさ」
「……なんで賞味期限が切れるような家を建てるんですか?」
「そりゃあ建てた家がたまたまお菓子の家だったからさ」
「……なんでお菓子の家なんか建てるんですか?」
「そりゃあ古い家を食べたら住むところが無くなってしまうからさ」
 屁理屈哲学禅問答。全く埒が明きません。
 そういえば、ヘンゼルは呟きを無視されてからずっと喋っていませんね。どうやら他の人達が話しているところに割り込むのが苦手のようです。対人スキルの低い人にはありがちな話ですね。
「……まあ、分かりました。他に働く当てもありませんし、どうかよろしくお願いします。ほら、お兄ちゃんも」
「あ、よ、よろしぅぉねがぁしゃす……」
 こうして、二人は無事に働くことが決まりました。



 最初のうちこそ、二人はまじめに働いていましたが、何分一人はパラヒキニート。もう一人は金の為なら親への暴力も厭わない性格破綻者です。長続きするはずがありません。
 二人は、どうにかして働かずに金を得ることが出来ないかと考え、ヘンゼルの持っていたノートパソコンでググったりヤフー知恵袋で聞いてみたり発言小町で相談したりにちゃんで「働きたくないけど何か質問ある?」スレを立てたりし始めました。
 しかしそうそう良い方法が見つかるわけがありません。
 やがて業を煮やした二人は、ある危険な結論に達しました。
 その危険な考えは、お菓子の家の外壁づくりの日に、実行されたのです。
「ねえ、お婆さん、外壁用のビスケットを焼きたいのだけど、かまどの使い方が分からないから教えて欲しいの」
「どれどれ、ちょっと見せてごらん」
 グレーテルの言葉を疑うことなく、お婆さんはかまどへと近づきました。
 その時です。
「えい!」
 グレーテルは、お婆さんをかまどへ放り込み、その後は少々グロテスク過ぎるので、結論だけを言っておくと、まあ、アレです。お婆さんは死んでしまいました。
「見ろよ、グレーテル。あのババア、やっぱり貯め込んでやがった」
「思った通りね。これで一生遊んで暮らせるわ」
 賞味期限が切れる度に家を建て替えるお婆さんです。お金を持っていない筈がありません。想像以上の財産に、二人は笑わずにおれませんでした。



 しかし、そんな生活も長くは続きませんでした。お婆さんを見かけなくなったことに不審を抱いた近所の人が通報し、二人はあえなく逮捕されたのです。
 逮捕されるまでの一か月の間に、二人は一生暮らせると言っていた筈の財産を、実に半分近くも散財しておりました
 あまりに身勝手な動機と、全くためらいを感じさせない残虐性。そして何より金使いの荒さにマスコミは注目し、事件は実に一カ月近くもお茶の間を賑わせました。
 それから数カ月後、二人に判決がくだりました。終身刑でした。
 さらに一年が経った頃、フジテレビが注目し、ヘンゼル役をKさなぎTよし。グレーテル役をKんのMほでドラマ化する事になりました。
 刑務所の中ではドラマは見れませんでしたが、グレーテルの大好きなジャニーズの主演で自分達がドラマ化したのですから、結構幸せそうでした。
 ヘンゼルも、社会公認で一生引きこもれることになったので、やっぱり結構幸せそうでした。
 めでたしめでたし。

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コメント


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”沢ガニの撮影”が、わからなくてググってみました。
そうしたらそのまま、ホラーテラー漬けに。3時間ほど読みふけってから、はっと気づいて喫茶まろんどに帰ってきました。
結局、この話を読み終えるまで3時間10分ほどかかりました。充実した時間をありがとうございました。

話の感想ですか? ......ろくでもねえ!

syo | URL | 2011-03-28(Mon)23:39 [編集]


>syoさん
ググりましたか! 沢ガニ!
グロ注意と書いておくべきだったかもしれませんね!
でもあのグロホラー都市伝説、結構好きなんですよ。
ちなみに、沢ガニネタをググらずに理解してくれた人は一人もおりませんでしたw
しかし、見事ホラーテラーに行きついて、ハマったようで、syoさんに関しましては一安心です。
ホラーテラーは私もお気に入りに入れている都市伝説系サイトでして。
あそこは本当に見る間に時間が奪われていきますよね。
そうして気が付くと空が白んで……。
そう、それこそヘンゼルのように……。

| URL | 2011-04-01(Fri)01:29 [編集]