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猫が居た。野良猫だ。その割にでぶっている。毛並みはアクロバティックという表現さえも遠慮がちに聞こえるほどうじゃじゃけている。
元は真っ白であったろうそれは、腹や背や尻尾や眉間が泥にまみれ、茶色のまだらをこさえている。
もっとも、当の本猫にとってはそんなことはどうでも良いのだろう。
だからこそそんな自分をそのままにして、塀の上での昼寝などに没頭できるのだ。
そんな猫を面白いと思って、デジタルカメラを引っ張り出した自分もどうかとは思う。
しかし、猫というのは猫というだけで人を引き付ける魅力を持っているものだ。
そういう点では年頃の女と共通していると言えなくもない。
ならば、メスの猫――いや、猫のようなメスというものが世に存在したらどうなるだろう。
きっとそれは、魔性と言っても差し支えのない存在なのではないだろうか。
話が逸れた。戻そう。
三百万画素と書かれたシールすらも掠れている、傷だらけのデジタルカメラを構える。
すると驚いたことに、猫の奴はこちらの存在に気付いて、即座に寝るのをやめてしまった。
これはまずいと慌ててシャッターに力を込める。
しかしほんの一瞬遅かった。
自分の一糸まとわぬ裸を撮られるのがよほど嫌であったのか、猫は塀の裏へと飛び降り、私の手元には塀に半分隠された尻の写真だけが残ることになった。
そんな、ある休日のひと時の話。