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喫茶ま・ろんど

TSFというやや特殊なジャンルのお話を書くのを主目的としたブログです。18禁ですのでご注意を。物語は全てフィクションですが、ノンフィクションだったら良いなぁと常に考えております。転載その他の二次利用を希望する方は、メールにてご相談ください。

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文で具現化する

たまに、無性に特定のシーンを文章に起こしたくなることがあります。
大抵は、生々しくも後味の悪い夢を見た後、その夢を文章に起こしたくなる事が多いです。
厄落としみたいなものなんですかね。
後味の悪さすなわち心中に残る不吉さを文章という形で頭の中から追い出して忘れる。
みたいな。

いつまでもぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐと頭を巡る夢の内容が、
文章に起こしてしまうとすっきりするんですな。
文章を書き出す前はそういう事はなかったと記憶しているのですが、
まったくもって不思議なものですねぇ。

続きから読める「這う女」は、そんな夢を起こした文章の一つ。
見た夢をそのまま描いているだけなので、あらゆる部分に意味が全くありません。
無論、TSでもなければエロでもありません。
なので、読む価値はないかもしれません。
まあ、雑記のついでに実例を、という事で、興味がありましたら。
でございますよ。

こういうのも夢日記っていうんですかね。

 部屋の広さは十二畳程だろうか。明かりは付いていないが隣の部屋から届く光のおかげで、問題無い程度に部屋の中を見る事が出来る。
 その部屋の中心。四畳かそれとももう少し使っているだろうか。ともかく真ん中辺りを女が這いずっていた。円を描くように、部屋の真ん中をぐるぐるとぐるぐると這いずっていた。女の白い着流しは全体に黒ずんだ汚れが目立つ。もう、それこそ十数年も着続けているのではないだろうか。四つん這いでいるため顔は見えない。しかし、見えない事にほっとする。葬式で死体に着せるあの服――それもひどく汚れたものをまとって、四つん這いで部屋をひたすらにぐるぐる女が回っているのだ。
 しかも絶えず、あー、うー、あーと奇声を上げている。そんな女の顔など見たいはずが無い。だいいち、自分はその顔がどんなものなのか知っているのだ。だからこそなおさらほっとする。
 部屋には、自分を含めて生きている人間が四人いる。この家の住人である自分と、何故居るのか分からない三人の戸惑う男。そして這いずる女だ。
「どうすんだよ、これ」
 三人の中の一人が問いかけてきた。向こうのガラス戸を引き開ければここから逃げられるのだが、この女の脇を抜けていくのが嫌なのだろう。
 向こうから届くテレビの音と画面の切り替わりらしきチカチカとした光の明滅が、一層こちらとの隔絶を強く思わせた。
 今、この瞬間も女は、あー、うー、あーと呻いている。
「何もしなければ大丈夫ですよ。ゆっくり隣の部屋に行きましょう」
「こいつ、何なんだよ」
 疑問に思うのは当然だろう。だから知っていることを素直に伝えた。
「よく分からないけど、この女の後ろについて同じように四つん這いでぐるぐる回っていると、女に認められたときに大金の場所を教えてもらえるらしいですよ。ただし、一度始めたら、認められるまで決して止めちゃいけないらしいですけど」
「本当か、じゃあ試してみるか」
 一人の男が、深く考えもせずに女の後ろで四つん這いになった。
 続いて、他の二人も後ろに並んだ。
 腐臭のする女の尻を眼前に見ながら四つん這いで動く気分というのはどんなものなのだろう。一人と三人が縦一列に並ぶその姿は、正直少しだけ笑いを誘った。
 女は、後ろの三人に気付いていないのか、それとも興味が無いのか、相変わらず、あー、うー、あーと呻いていた。
「なぁ、これ、どれくらい続ければいいんだ」
 もっともな質問だ。だから、知っていることを素直に伝える。
「女の気分次第ですが、だいたい一年か二年だそうです」
「一年だと。冗談じゃない。やっていられるか」
 先頭の男が立ち上がる。すると、それまで決して変わらなかった女の様子が変わった。
 すっと立ち上がり、男の方を見る。その顔が自分からも見えてしまう。口は不自然なくらい縦長で、目は無い。ある筈の場所はぽっかりとした穴になっており、奥は真っ暗で何も見えない。
 女は戸惑う男に近付くと、あーあーあーあーあーと呻きの音量を強めていった。
 そこで自分は目を背けた。途中で立ってしまった人間がどうなるのか知っているからだ。最初は男の焦る声と女の呻きが重なっていた。やがて、女の声だけになった。悲鳴は聞こえない。抵抗するような音も聞こえない。ただ、女のあーあーあーあーあーという呻きだけが聞こえていた。
 やがて、ぴたりと呻きが止まった。更にもう少しして、ずりずりと床を這う音が聞こえて来た。
 それに安心して向き直すと、元の通りに、あー、うー、あーと呻き這う女の姿があった。
 後ろにいる男の数は二人だ。もう一人はどこにも見当たらない。そして、二人はもう一人の顛末を見てしまったのだろう。酷く形容しがたい表情で、黙って女の後ろを這っていた。
 それを確認したところで、女に興味を持たれないようそっと脇を抜けた。
 そして、ガラス戸を開けた。
 敷居をまたぎ後ろを振り向く。そこには相変わらずぐるぐると回る一人と二人がいた。
 そっとガラス戸を閉め、数秒の間をおいて再びガラス戸を開けてみる。そこにはガランとした十二畳の空間しかなかった。
 しかし自分は知っている。一人と二人は居るという事を。何度も開け閉めを繰り返せば、また何かの拍子にそれを見る事が出来るのだ。その時、二人はまだ女の後ろについて這っているのだろうか。
 もうどうでもいい事だ。
 何より、あの女は好きになれない。出会わないよう、このガラス戸はなるべく開け閉めしないようにしよう。
 この家には女だけでなく、様々な何かがそこら中に居る。
 階段をおりる最中、肩を掴んで引き止める二本の腕や、寝ている人間を常に見続ける視線など、十四もの何かが居るのだ。
 何故、自分はこの家から出て行かないのだろうか。それだけが唯一の謎だ。


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