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喫茶ま・ろんど

TSFというやや特殊なジャンルのお話を書くのを主目的としたブログです。18禁ですのでご注意を。物語は全てフィクションですが、ノンフィクションだったら良いなぁと常に考えております。転載その他の二次利用を希望する方は、メールにてご相談ください。

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お手魂遊ばれ

 何故意識を失ったのかは記憶にない。ただ、気が付いたら身動きが取れなくなっていた。
 目隠しをされているらしい。目を開けても真っ暗で何も見えない。しかも、その目隠しを外そうにも、両手が何かで固定されており不可能だ。手首に伝わる固い感触から察するに、手錠だろうか。身をよじろうとしてもう一つ気が付く。足も固定されている。最悪の状況だ。


「な、なんだこれ。おい、誰か! ……って、今の俺の声? なんだよ、いったいどうなってんだよ!」
 何も分からず思うままに言葉を発したが音が変だ。妙に甲高い。喉に細工でもされたのだろうか。いや、その割には喉に違和感はない。という事は答えは一つしかない。
「なんだよー、これ……。耳がおかしいし……」
 そうは言ったものの、本当に耳がおかしいのかも自信はない。とはいえ、そんな事で頭を悩ませている場合ではないだろう。とにかく今はなんとかして体を自由にしなくては。

 突然大きな音が聞こえた。誰か助けに来てくれただろうか。いや、そんな都合のいい事は無いだろう。助けならば、何か心配するような言葉の一つくらいかけてくれるだろうし。となると、俺をこうした奴か。考えてみれば当然だ。この場にいない方が不自然というものだろう。そんな簡単な事にも頭が回らず、不用心に騒ぎ過ぎた。訳が分からず取り乱していたとはいえ、情けない話だ。

「こんにちは。さあ、楽しもうね」
 言葉が聞こえたが早いか、節くれだった感触が胸を撫でてきた。あまりの気色の悪さに鳥肌が立つ。
「なっ! や、やめろよ、この野郎!」
 男の目的が分からない。ただ、楽しもう、という言葉からは、考えたくもないおぞましい想像が自然と浮かんできた。そして、その想像が正しい事を証明するかのように、男の指は俺の乳首の辺りを執拗にいじってきた。
「ばっ! やめろ、ホモ野郎! 触んじゃねぇ!」
 妙にくすぐったいような感触に戸惑いながらも、精一杯の声で怒鳴る。しかし、聞こえる自分の声は相変わらず甲高く、自分では全く迫力が感じられない。
 そう言えば、男の声は普通に聞こえているような気がした。となるとおかしいのはやはり喉の方なのだろうか。分からないがとりあえずそんな事を考えている状況ではないだろう。こうしている間にも見知らぬ手は、俺の胸をもてあそんでいるのだから。

 しかし、自分の胸が妙に敏感に感じる。普段そんなところを意識していじらないから分からないが、ここまでくすぐったいものだろうか。それとも、こいつがよほど経験豊富で手慣れているという事なのだろうか。認めたくはないが、正直少し気持ち良さを感じ、自己嫌悪が沸いてきていた。
 なんとか身をよじりその感触から逃れようとしていると、それを嘲笑うような男の声が聞こえてきた。
「やめて欲しいかい? それなら、僕のを舐めてくれるなら、やめてあげるよ?」
 その言葉で確信出来た。こいつは同性愛者で目的は俺の体なのだ。俺はこんな変態にいつの間にか捕まってしまい、今まさに犯されようとしているのか。冗談じゃあない。こんな奴に思うようにさせてたまるか。
「冗談じゃねぇ! んな事したら噛みちぎってやる!」
 威勢良く怒鳴ってはみたが、どうにもならない事は自分でも分かっている。目隠しで顔は分からないが、雰囲気からも、ただの強がりだとばれてしまっているのが伝わってきた。それでも今は、お前には屈伏しないと主張し、身を守る努力をすべきだろう。今の俺にはそれしかできないのだから。

 そうこうしていると、ついに下半身に手が伸びてきた。俺のモノをどうにかすると思っていたが、その予想は大きく外れた。男の指は足の付け根に伸び、妙にぬるっとした液体の感触を伝えてきたのだ。
「やっ! やめろ! 何塗ってんだよ!」
 こいつの目的が分からない。何を、何のために、何故そんな場所に塗っているのか。そこが尻の穴ならば、最悪の想像が浮かぶというものだが、そこからも微妙にずれている。

「……なんだと思う? 当ててごらんよ」
 そんな俺の考えが伝わったのか、男はからかうように言葉を投げかけてきた。表情は見えないが、いやらしい顔でほくそ笑んでいるのだろう。俺とは対照的な落ち着きにひどい苛立ちを覚えた。
「分かるわけねぇだろ! 変態!」
 そうやって怒鳴ったところで全く焦った様子は感じられず、むしろ喜ばせているように思えた。それでも、諦めたくないという気持ちで、俺は言葉だけでも精一杯に反抗した。
「でも、こうしてると気持ち良いんじゃないかい? 正直に言ってごらんよ」
 確かに、先ほどから気持ち良さのような感覚が伝わってきている。そんな部分を触られて、何故そんな感覚になるのか。もしや、塗っているものの正体は媚薬か何かなのか。それならばこの不自然な感覚も納得できるというものだ。
「そんなわけねぇだろ! 絶対殺してやるからな!」
 認めるわけにはいかない。男にもてあそばれて感じてしまっているなどと。それを認めるという事は、自分もまた同性愛者であると認めるようなものだ。そう、頭では思っているのだが、気持ち良さに自然と腰が跳ね、どうしても隠し通す事が出来なかった。

男の指が離れ助かったと思ったが、それが都合のいい想像だとすぐに思い知らされた。気配から、男が俺の足の間に入ってきたのが感じられる。それが意味する事は一つしかないだろう。
「うあっ! やめろ! 抜け! 変態!」
 予想通り、腹の中に異物が入ってくる感触が伝わってきた。自分の尻の穴がそこまで簡単に異物の侵入を許した事にも驚いたが、その異物が、痛みどころか快感を伝えてきたという事実がショックで仕方がなかった。
「何か勘違いしているみたいだね。お尻の穴はこっちだよ?」
 勘違い。その言葉の意味を考える前に、細い――恐らく指の侵入する感触が尻の穴に伝わってきた。その感触は、確かに、座薬を差し込んだ時のような痛みと気持ち悪さを伝えてきた。
「……ぇ?」
 どういう事だ。尻の穴には指が入ってきていて……。それなら、こいつのモノが入っているのはどこなんだ。俺は何かとんでもない勘違いをしているのか。分からない。全くわけが分からない。
「え? やっ なんだよこれ! やだ! なんだよ!」
 もう何も理解できない。甲高い声。敏感な胸。足の付け根から伝わる快楽。ないはずの穴に入っている男のモノ。これじゃあまるで――。

「え……。な、なんで……。俺……。おんな……?」
 体の中に精液を出されながら、自分でも意識せずに言葉にしていた。あり得ない。しかし、そう考えればしっくりとくる。そう思ってみれば、確かに胸がわずかながらも揺れているような感触もあるじゃあないか。そうか、俺の体は女だったのか。それじゃあ、こいつも同性愛者なんかじゃあなかったのか。しかし、なんで俺が女になってしまってるんだ。そもそもそこが分からない。
「こうなると、飽きるな」
 混乱している俺に、そんな呟きが聞こえてきた。
 直後、俺の意識は闇に消えて行った。最後の瞬間、最初からそれが分かっていれば、もっとこの状況を受け入れ楽しめたかもしれないなぁ、と後悔だけが残った。

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