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喫茶ま・ろんど

TSFというやや特殊なジャンルのお話を書くのを主目的としたブログです。18禁ですのでご注意を。物語は全てフィクションですが、ノンフィクションだったら良いなぁと常に考えております。転載その他の二次利用を希望する方は、メールにてご相談ください。

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○○さんは怪しい薬で犬娘にされてしまいました(後)

「日に日にひどい顔になっていくな。最初の頃の気丈さはどこにいったのやら」
 そう言葉を投げかけてきたのは、最初の日に傷を負わせた男だった。真吾が思う以上に深い傷だったのだろう。いまだに取れていない肩口の包帯が、痛々しさを感じさせていた。
「どうした? もう攻撃してこないのかね? 君にとっては私は憎らしい相手ではないかね?」
 男は、床に水飲み皿を置きながら、からかうように言葉をかけてきた。
 二日目ぐらいであれば、、この見下した物言いに反発を覚え、歯を剥いて逆らっていた事だろう。しかし、今となってはそのような元気があるはずもない。
 真吾は、言葉を発するのも億劫に感じ、床でじっと丸まりながら男が部屋から出て行くのを黙って待っていた。一人になってから、その水を飲もうと考えて。
 喉は渇いている。今すぐにでも水に飛び付きたい。しかしその水で喉を潤せば、別の欲求が沸いて来てしまう。
 性欲に襲われ、目の前に人がいる事も気にせずに、股間をそこかしこに擦り付ける事だろう。
 わずかに残っていた人間のプライドが、誰かの前で股間を濡らし、悶える姿を見せたくないと考えさせ、真吾を抑え付けていた。
 いつもだったら、水を置いたらすぐに部屋を出て行くはずなのだが、その日は違った。
 男は、真吾の手が届かない位置まで離れると、水と一緒に持ってきたらしいパイプイスを組み立て、その上に座ってじっと真吾の様子を眺めていた。
「どうした? 飲まないのかい?」
 いやらしそうに笑う男は、真吾が飲まない理由を知っていて聞いてきているのだろう
 一時間ほど経過し、喉の渇きに堪えられなくなった真吾は、男の視線を気にしながらも、渋々水に向かって舌を伸ばした。
 あっという間に水を飲み干したが、それでも真吾の喉は満たされなかった。
 既に空っぽになった水受け皿に舌を這わせ。舌と皿の擦れ合う音がしばらく部屋に響き続けた。
「全く浅ましいものだ。日を追うごとに人間らしさが減っていくな。這いつくばって水を飲むのに抵抗がなくなったのはいつからかね?」
 真吾ははっとした。最初の日にあれほど屈辱を感じていた行為を無意識に受け入れている自分がいる事に、言われてはじめて気が付いたのだ。
 食欲と性欲に心をさいなまれているとはいえ、確実に動物的な何かに心を支配されていっている事に、真吾はほのかに恐怖を覚えていた。
「実はね。今日は君に話があるんだよ。もう一週間も罰を与えたしね。そろそろ許してやろうかと思ってね」
 冷静な思考が残っていれば、プライドが邪魔をして、その言葉に耳を貸す事はなかっただろう。
 しかし今の真吾にとってその話は、非常に魅力的なものに感じられた。
「本当に……許してもらえるんですか?」
 四つん這いのまま顔だけ上げて、真吾は男に向かって言葉を返した。
 その言葉は相変わらず、人間に理解できる言葉にはなっていなかった。
「ははは。何を言っているのか分からんな。声帯まで変化してしまったのは計算違いだった。いや、しかしこの方がより動物的で罪悪感が減って良いのかも知れん」
 真吾は「罪悪感が減る」という言葉に関心を向けるべきだった。
 しかしその言葉は届かない。そんな事よりも、この空腹を満たすための条件の方が、今の真吾にとっては重要だったのだ。
「なに、簡単なことさ。一週間前に中止した実験を改めて行いたくてね。君にもう少し協力的になってもらえないかと思ったのさ」
「実験?」
 真吾には、験というのが何なのか分からず、ぼうとするばかりだった。
「あぁ。そういえばあの時は水を飲むのに夢中で聞いていなかったのだね。君の生殖機能が働いているのかどうか、実際に性行為を行う事で確認したいのだよ。協力してくれるというのなら、こちらに尻を向けて、挿入しやすいように突き出しなさい」
 真吾には逆らう理由などなかった。食欲どころか、これまで飢えていた性欲すらも満たしてくれるのだ。ぜひやらせてくださいと頭を下げたい程に魅力的な条件だった。
 真吾は、もはや羞恥心のかけらも見せず、名も知らぬ白衣の男に、尻尾の付いている尻を突き出した。
 その股間からは、媚薬の効果で、触れてもいないのに床に滴る程に濡れていた。
「やれやれ、犬の遺伝子を組み込むだけで、人間というのはこうも浅ましくなるものなのだな。まぁ、媚薬の効果もあるのだろうがね」
 言い終わるが早いか、男はパンツを脱ぎ、真吾の股間にモノをあてがった。
 無意識の行動だったが、真吾の尻尾は、これから伝わってくるだろう快楽を期待し、左右に揺れて喜びを表現していた。
 その直後、一週間前と同じように、勢いよく真吾の中にそれは侵入してきた。
 しかし真吾は、一週間前と違って素直に快楽を受け入れ、身を震わせていた。
 真吾は発情した犬そのもののだらしない嬌声を上げ、命令されてもいないのに尻を激しく振って、男に快楽を伝える手助けをしていた。
「全く卑しい奴だ。そんなに欲しいのなら、未だしてやるよ……!」
 本当に受精実験だけが目的だったのだろう。変に焦らす事もなく、ワンパターンに腰を振り、男はあっさりと真吾の中に精を放った。
 一人でするよりは遥かにましだったが、その味気ない行為に、真吾は正直不満を感じていた。
「随分と不満そうだな。しかしそれくらいが丁度良い。そうして常に男を欲するようになるなら、それはそれで都合が良いというものだ」
 そう言いながら男は服装を整え、もう真吾には用事がないと言わんばかりに足早に部屋を後にした。
 しかしその後、別の男が再び部屋を訪れ、この場所に来て初めての食事を真吾に与えたのだった。
 その内容は、これまでの厳しい仕打ちが嘘と思えるほどに豪勢なものだった。
 水と同じように床に直接置かれはしたが、食いきれないほどの量に真吾は驚きを隠せなかった。
「痩せてしまっては見栄えがしないからね。しっかり食べて、落ちてしまった体重を戻すんだよ」
 一刻も早く空腹を満たしたくて堪らなかった真吾の耳に、その言葉が届くことはなかった。


 真吾が鎖に繫がれ、四ヶ月が過ぎようとしていた。
 とうに約束の一ヶ月は過ぎていたが、最早そんなことはどうでも良かった。
 まともな人間扱いはされないが、三度の食事は豪華なものであったし、受精実験と称した日々の性行為は、今までに味わった事のない快楽を真吾に伝えてきた。
 以前の生活よりずっといい。どうせならこのままこうしていたい。そう思わせる魅力が今の生活にはあるのだ。
 そんな真吾の穏やかな様子を監視カメラ越しに眺める視線があった。
「失踪手続きのほうは問題ないかね」
「はい。ありきたりですが、ゆきずりの女と駆け落ちしたという風にしてあります。疑問に思う者は確認できておりません」
「うむ。では、彼――いや、彼女達の体の方はどうかね」
「順調です。人間的な理性はだいぶ減ってきておりますが、知能の低下はほとんどありません」
 その話を聞いて、質問をした男は非常に満足そうにうなずいた。
「それでは、一番のネックであった受精実験の結果はどうかね」
「はい。強制的に発情させ、人工的に排卵を促しておりますが、受精にはいたったケースはゼロです」
「うむうむ。良い結果だ。やはり男を素体にしたのが良かったようだな。これなら市場に出せる日も近そうだ」
「全くです。妊娠してしまうようでは、愛玩するのに不便で仕方ないですからね」
「うむ。避妊手術で腹に傷を残してしまっては、売り物としての価値は下がってしまうしな。まぁ、この結果を見る限りその心配はもう要らないがね」
「そうですね。しかし、彼女達はこれで幸せなんですかね」
「あの表情を見る限りは幸せだろうよ。この後どうなるかは知らんがね」
「そうですね。紳士に飼われれば、愛玩犬として今よりもさらに贅沢な暮らしが出来るでしょうし。逆に、新しいおもちゃ程度に思っている成金にでも買われたら……」
 そこから先は言いにくいのか、助手らしき男は口ごもってしまった。
「まぁ、一年ももたないだろうね。しかし私たちがそれを気にしてはいかんよ。彼女達はあくまでも商売道具。売った後の事まで考えていては、身が持たん。情が移る気持ちは分からんでもないがね」
「はい……」
「なんとかしてやりたいのなら、金を貯めて自分で買うと良い。少なくとも一匹は救うことが出来る」
「私の給料を知っていて……。意地悪な言い方ですね。彼女達を買える金があるなら、先に家を建てますよ」
「ははは。もっともだ」
 彼らがどのような経路で、どのような相手に売りつけるのかは分からない。
 確かなのは、需要があり、ようやく供給する事が出来るようになった、という事だけだ。
 そして、恐らく需要がなくなる事はない。その事実は、真吾のような幸せな人間がこれからも増え続ける事を伝えていた。
 少なくとも、彼らの存在が明るみに出るその日までは。

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